焔の精霊-2
「聞いてみたらいいじゃない」
「……聞いた……」
「なんて答えたの?」
「嫌いじゃないってよ」
……益々微妙だ……
「なんとも言えないわねぇ……」
嫌いじゃないという事は、特に好きというわけでもない、ともとれるし……
「お 噂の彼女だよ」
ベルリアはひらひらと手を振って通りを歩いている彼女に合図を送る。
合図に気づいた彼女は大量に持っている本を抱え直し、1つに括ったプラチナブロンドの髪を揺らして近くに来た。
「煌びやかなメンバーだな……」
魔導師が3人も集まれば嫌でも目立つ。
見た目も良く、実力もある3人ならなおさらだ。
「捜したぞ」
「……捜してねぇじゃねぇかよ……」
お茶飲んでんじゃねぇか、と彼女…キャラは男っぽい口調で話す。
学校で自分の能力を伸ばしつつ働く事になったキャラは、資料室の管理を任されたのだが、今まで長年放置していたらしく、資料室はかなり酷く散らかっていた。
今はその資料を1つ1つキレイに装丁し直す作業に追われている。
「何か用か?」
聞かれたアースは立ち上がると、キャラの手から本を取り上げて答える。
「用があるのはこっち」
顎でベルリアを指して自分は本を運ぶ。
アースとベルリアを交互に見たキャラは、先にベルリアの話を聞こうと、先ほどまでアースが座っていた椅子に座る。
「実はね、エンの事なんだけど……」
「エンさんの?」
エンとはアースの幼なじみで、初めてキャラが会った時に火竜の姿をした火の精霊を頭に乗せていた。
エン本人に自覚は無いが常に頭の上に居て、エンの真似をしてコミカルに動くので、会う度に笑ってしまう。
「あいつは『火』系の魔法は魔導師クラスなんだが、他はさっぱりダメでね。もしかしたら、その精霊と関係あるんじゃないかな〜と思ったんだ」
魔法にも色々種類があり、人によって得意分野が違う。
大きく分けると、攻撃系、防御系、治療系……更に分けると、魔法陣、『火』『水』『風』……などなど細かく分けるときりがない。
アースはどの分野の魔法もオールマイティーにこなす事ができるかなり特殊な人物だ。
「それでオレは何をすればいいですか?」
「うん。明日、実技場でアースと模擬戦させるから見てくれるかな?」
魔力を使っている時、精霊がどうしているかを教えてほしいらしい。
「わかりました」
話は終わりだと判断したキャラは立ち上がり、アースの後を追う。