焔の精霊-10
「そっかぁ〜今までずっと助けてくれてたのかぁ〜」
エンは火竜に感謝しつつ、ため息をつく。
「ボクにも見えたらいいのになぁ〜」
居るのはわかっているが、見えないし気配さえ感じないのはかなり寂しい。
「すいませーん。誰かドア開けて下さい」
落ち込んだ空気を払拭するのんびりとした声が医務室の外からしたのでエンがドアを開けた。
キャラがおぼんに人数分のコーヒーをのせて持って来たのだ。
「どうも」
エンにお礼を言ったキャラと、火竜の目が合う。
火竜は目をキラキラさせていきなりキャラに飛びついてきた。
「うえぇっ?!」
「わあっ!」
驚いたキャラはおぼんを落とし、エンは咄嗟にそれを受け取る。
「どうした…の…さ…」
無事におぼんをキャッチしたエンはホッとしてキャラに目を向けて……固まる。
キャラは赤い小さな火竜を抱いていたのだ。
「もしかして……見えてます?」
エンが固まっているし、視線が火竜に注がれているという事は……エンは驚いた顔でコクコクと頷いた。
「おい、どうした?……なんだそれ?」
医務室から顔を覗かせたアースはキャラの腕に抱かれている火竜を指さした。
「えっと……エンさんの精霊……ってかアースにも見えてる?」
「おお、バッチリ見えてるぞ」
いったいどういう事なのかわからず、3人は顔を見合わせて、とりあえず医務室に入った。
「……拾ったのかい?」
中に入るとベルリアが火竜に目をとめて聞いてきた。
「エンさんの精霊です。さっきいきなり飛びついてきたと思ったらこんな感じで……」
キャラは戸惑った顔で首を傾げる。
「……キャラ、資料室は開いてるかい?」
ベルリアはしばし考えてからキャラに聞いた。
「はい。開いてます」
「ちょっと調べものするね。アースは講義の時間だよ。エンとキャラは精霊と仲良くなっといて」
それだけ言うとベルリアは自分のコーヒーを手に取り、さっさと医務室を出て行った。
「うおっ!やべぇ!おばちゃんありがとなっ!」
アースは時計を見ると慌てて立ち上がり、コーヒーを一気飲みしてから治療してくれた医務室のおばちゃんの頬にチュウッとキスをして出て行く。