紫黒の夜-4
「…………アリシャ」
部屋に響くのは低い声。
先ほどまでの透き通るような女声ではなく、甘く囁くように少女の名を紡ぐのは低く柔らかな男声。
長い黒髪の中から見える赤い瞳は優しく少女を見下ろし、頬を撫でる指は唇へと移る。
その容姿もエプロンドレスからスーツへと変わり、体つきも丸みのある女体から筋肉質な男体に変化していた。
「キミが望み続ければ、契約は永遠に守られる。アリシャ」
ウルはそう呟くと少女の唇にキスを落とした。
闇に魅入られた僅か13歳の少女が進まぬ『時間』に身を沈めたのは遥か遠い昔。それはまだ人が剣を持ち、馬に跨がり、地を駆け巡っていた頃のこと。
力を持たぬ幼き人間の少女と闇を統べる者の出逢いは必然か偶然か。
それはまた別の話―――
-Fin-