紫黒の夜-3
「ウルは守ってくれる。…………だから、いいの」
そう答えると、アリシャは目を閉じる。そんな少女の肩に掛かる金糸を優しい手付きで背中に流し、ウルは少女の首筋に口を寄せる。そして、口唇から覗く白い二本の牙を白く柔らかな肌へと突き立てる。
「―――っ」
その瞬間、アリシャは小さく息を詰め、掴んでいたシーツをより強く握りしめた。
次第に身体中を駆け巡るのは痛みよりも心地良さが勝り、それも過ぎ去るとゆっくりと意識が定まらなくなる。今にも崩れそうな身体を支えるように背中に回されたウルの細い両腕に全てを委ねる。
白い肌から牙を抜き、傷痕から僅かに流れる赤い血を舌で舐め上げ、ウルは少女の首筋から顔を離した。ぐらりと少女の身体は糸が切れたように傾き、ウルに支えられながらベッドへと沈み込む。
肌蹴た白い胸元を隠すように夜着のボタンを留め、ブランケットを掛けると眠りに落ちた少女の頬を優しく撫でる。日頃血色の良い頬と紅を差さずとも紅色の唇は色味を失っている。
少女のそんな様相に僅かな罪悪感を抱きながらも、満たされた空腹や人ではない自分に全く恐れを抱かぬ少女の言葉にウルは一時の至福を得ていた。