黒の魔導師-4
コンコン…ガチャ
「あの、学……長…」
ノックと同時にドアを開けた女性が固まる。
乱れた髪に乱れた服装の男が2人…
ぴーん
と、その場の空気が張り詰める。
「…し…失礼しました」
女性はドアを閉めて、ドタバタと走り去って行った。
遠くで、「ねぇ!聞いて!凄いの見ちゃった!」という声が聞こえる。
「……勘弁してくれよ……」
明日には学校中に、学長と魔導師の禁断の恋の噂が広がる事だろう。
当のベルリアは涼しい顔をして黙殺している。
アースは頭をかきむしりながら、懐からタバコを取り出すと火を着けた。
その時
いきなり空が赤く染まり、ドォンという建物を揺らすほどの轟音が響いた。
思わず、これは関係ねぇよな、とタバコと空を交互に見てしまう。
ベルリアが窓を開け、身を乗り出して外を確認すると、近くの山の中腹あたりから炎が垂直に空に向かって上がっていた。
かなり不自然だ。
街の方にも飛び火して、あちこちで小火が起きている。
「私はこっちで指示をだす。アース。お前は元を断て」
そう言ってくるベルリアに、アースは苦虫を噛んだような顔をする。
「……無茶言うなよ……」
ついさっき魔力を吸い取られたばかりで、ハッキリ言って動くのもダルいのだ。
ベルリアの横に移動して外を見るアースに、ベルリアが手を伸ばし、首の上あたりの髪を鷲掴む。
「あ?」
ベルリアはそのまま力ずくで自分の方に向かせると、唇を重ねる。
「んぐぅっ!」
いったい何をするのかと暴れるアースを無理やり押さえつけ、口移しで魔力を返す。
「ふ……ぐ…」
半分ほど魔力が戻ってくると、アースはベルリアを引き剥がし手の甲で口を拭う。
「てっめぇ…せめてリンに変わってからにしやがれ!」
アースがベルリアに食ってかかると、窓の下で
「きゃあ♪今の見た?!」
という声……恐る恐る下を見ると、数人の女性が目を爛々とさせてこっちを見ていた。
噂は事実として語られる事になりそうだ……脱力したアースはベルリアに食ってかかるのをやめる。