黒の魔導師-29
「リン。いくよ」
体内のリンに一声かけてから、ベルリアは呪文の詠唱を始めた。
呪文が紡ぎ出されると、魔法陣と水晶玉が脈打つように光り出す。
謳うような詠唱と共にベルリアの指が、複雑な動きを繰り返し光が徐々に強くなっていく。
目も開けれないほど光が強くなってきた時、中央にいたベルリアの体がダブって見え、次の瞬間には魔法陣から光が消えさる。
そこには2人の学長が立っていた。
「……初めまして…かな?」
少し息のあがったベルリアは、目の前に背を向けて立っている全裸のリンに言葉をかける。
「ふふっ、そうよね。初めましてだわ」
裸だという事はまったく気にせず、リンは振り向いてベルリアと視線を絡める。
ずっと同じ体を共有してきてたので、実際会うのは初めてだった。
「思った通りの良い男ね」
その言葉にベルリアは、リンの髪を一房握り、それにキスしながら答える。
「君は思った以上に綺麗だ」
そんな2人にアースはげんなりして言葉をかける。
「同じ顔で褒め合うな。気持ちわりぃ」
「それが、やっと2人揃った親に言う言葉かい?」
ベルリアの言葉にキャラは驚く。
「親?!」
どう見てもアースと学長に親子ほどの年の差はない。
「こいつらこう見えても100年は生きてるし、血の繋がりはない。俺の育ての親ってわけだ」
「ひゃく!?」
それはまた凄い、とキャラはリンとベルリアを見る。
「あたしがお母さん役で、ベルリアがお父さん役なのよ」
リンは説明しながらキャラに近づき、頬にキスした。
「ありがとう。キャラ。
おかげで魔法成功よ」
リンが本当に嬉しそうに笑顔を向けるので、かなり疲れてしまったが協力して良かったな、とキャラも笑顔になる。
「私からもお礼を……」
リンに続き、近づこうとしたベルリアに、アースはキャラを抱きしめて怒鳴る。
「てめぇはすんな!くそ親父!無理させやがって!キャラに謝れ!」
無理させたのはアンタだ、とすかさず突っ込むキャラに3人は笑い、キャラもつられて笑う。