黒の魔導師-23
「アース、この失礼なお嬢さんは誰なのさ?」
「昨日の山火事の時、手伝ってもらったキャラ。
おい、どうした?」
アースはエンに簡単に説明すると同時にキャラに聞く。
「ご…ごめん。
彼の頭の上に…火竜みたいのが乗ってて、おんなじ動きをしたもんだから…」
多分、火の精霊なのだろうが、エンの真似をして動くのでかなりおかしい。
火竜は、自分を見ているキャラに気づくとバチンとウインクして挨拶した。
食事を取りながらキャラの事を話すと、エンは興味津々になった。
「へぇ〜僕の頭にそんなのが居るんだぁ」
エンはここらへんかな?と頭の少し上を撫でる。
火竜は嬉しそうにその手にすり寄っている。
「嬉しそうにしてますよ」
「本当?!僕にも見えたらいいなあ〜」
エンはクスクス笑うキャラを羨ましそうに見る。
キャラにとって、今まで気持ち悪がられるだけの能力だったが、さすがは魔法大国。
能力に対しての反応が他とは違う。
アースもエンも、すんなりと自分を受け入れてくれた。
その事がなんとなく嬉しくなって、自然と顔がほころんでいく。
食事が終わると、エンと別れて、街から少し離れた所にあるアースの家に帰る。
キャラは荷物を床に置くと、腰に手を当てて背筋を伸ばした。
アースはそんなキャラに後ろから抱きつくと、その首筋に顔を埋める。
「なに?」
キャラが聞くと、アースは盛大にため息をついた。
「……ちょっとヤキモチ。」
エンと話すキャラはとても穏やかで、アースが見たことがない表情だった。
会ったばかりなのだから知らない事が多いのは当たり前だが、妬いてしまうのはどうしようも無い。
キャラは振り向いてクスッと笑うと、アースにチュッとキスをする。
「悪い気分じゃない。」
ヤキモチも度が過ぎれば迷惑だが、これくらいならかわいいものだ。
アースは少し驚いたが、フッと笑い、キスを返す。
マッタリとキスを楽しんでいると、外が騒がしくなり、突然ドアがバーンと開いた。
「アース!!どぉゆう事よ!?」
怒鳴り込んできたのはリンだった。
「げっ」
思わず後ずさるアースにリンは詰め寄る。
「覚悟しなさいよ!!」
リンはそう言うと指で空中に何かを描く仕草をする。
空中に光る魔法陣が出来ていき、リンはアースに指を突きつけて、その魔法陣を飛ばす。