黒の魔導師-21
「それに、呼んだのは他にも理由があるんだ」
にっこり笑うベルリアに、キャラは首を傾げる。
「精霊が見えるそうじゃないか。今までそういう能力を持った人間は知らないんだ。
詳しく聞かせてくれないかい?」
キャラは頷くと、自分が見えている事を話し出す。
精霊はあらゆる所にいる。
焚き火をすれば、火の精霊が踊り、唄を歌えば、音楽の精霊が合唱する。
残念ながら、キャラは見えるだけで、声は聞こえないから聴けないのだが、その光景はとてつもなく綺麗だ。
「精霊は、いろんな姿をしてますよ。
人型とか、動物っぽいのとか、もやもやした煙みたいのもいます。」
話しを聞いていたアースとベルリアは、ほほう、と感心する。
気まぐれに姿を見せる精霊もいるので話は聞いた事があったが、ここまで詳しくは誰も知らないだろう。
「話とかは出来ないのかい?」
質問するベルリアにキャラは肩をすくめる。
「なんとなく、言いたい事はわかりますけど、声を聞いたりした事はないです。」
「ふむ……」
考え込んだベルリアに、アースは怪訝な顔をして聞く。
「なんか、ひっかかる事でもあるのか?」
「う〜ん……」
アースの問いかけに、ベルリアは組んだ手の上に顎を乗せて、キャラに目を向けた。
「火蜥蜴がキャラの言う事聞いただろう?」
ベルリアの言葉に、アースとキャラは昨日の事を思い出す。
確かに、アースの言う事には耳も貸さなかった火蜥蜴だったが、キャラの言葉に大人しくなった。
「火蜥蜴はどっちかと言うと、精霊寄りの生き物だからね。
それに指示が出来たって事は、多分、精霊にもできるはずなんだ。
訓練次第で相当強力な能力になると思う。」
ベルリアの分析に、キャラは目を丸くする。
「どうだろう?キャラ。
私の方で君を全面的にバックアップするから、その能力を伸ばしてみないかい??」
キャラは意味が解らずキョトンとして、返答につまる。
「つまり、ここで訓練を受けながら働けって事だ」
「強制ではないよ」
アースの言い方に苦笑いしながら、ベルリアが言う。
「決めるのはお前だ。どうする?」
アースの問いかけにキャラは立ち上がり、
「こちらこそ!よろしくお願いします」
と、ベルリアに頭を下げた。