黒の魔導師-11
「お前、女か?」
バッシーン
アースの力が緩まった時にすり抜けたキャラの平手が頬に炸裂した。
「ってぇ〜」
痛烈な一撃にアースは頬を押さえてうずくまる。
その隙に体を離したキャラは、憤慨して山を降りていく。
「っ!おいっ!待てよっ!」
慌てて声をかけるアースを無視して、まだ火がくすぶっている道をズンズン進む。
「待てって!」
追いかけてきたアースがキャラの腕を掴む。
「触るな!!」
キャラは掴まれた腕を振りほどき、アースに怒鳴り、睨みつける。
「悪かった。謝る!
言葉使いが荒かったから男だと思ってた!」
「そっちじゃねぇ!」
謝る所が違う。
ぶっちゃけ男に間違えられるのには慣れている。
「なんだ?!キスした事か?それは謝らねえ!」
胸を張って言うアースにキャラは唖然とする。
「そっちに謝れ!
相手の同意無しにやるな!!」
「じゃあ、お前は同意したのか?!」
「するわけねぇだろ!!」
「じゃ、勝手にするしかねぇだろぅが!」
「意味わかんねぇよ!」
ぎゃあぎゃあと怒鳴り合う2人。
まるで子供の喧嘩のようだ。
「っつうか、ストップ!
その話はとりあえず置いといて…」
埒があかない言い合いを止めたアースはキャラに聞く。
「現実問題。お前はこの後どうするんだ?」
服装からして旅人なのはわかっていたが、もう暗くなっているうえに、街の宿は焼け出された人でいっぱいだろう。
「…あ〜っと…」
考えて無かったキャラはポリポリと頭を掻く。
その様子を見たアースはため息をつくと提案する。
「近くに俺の家がある。泊まっていいぞ。」
キャラは黙ったままアースを睨む。
アースは両手を挙げて降参のポーズをとると言葉を続ける。
「俺は学校にもどらにゃいかんし、やる事もあるから今日は家には戻らない。」
「…いや、それってなんか悪いし…」
主の居ない家を使うなんて…かと言って居るのも嫌なのだが…しかも、初対面だ。