第1部 ご主人様との出会い -18
16.パンドラの箱の中身
パンドラの箱の中に入っていたのは、あの大事件です。
そのとき私は小5で、その日は林間学校の初日でした。
宿舎での夕食後、青い顔をして先生が私を呼びにきました。
そして、先生たちの部屋に連れて行くと、お家で大変なことが起きたから私は帰らなければいけない、今私も顔を知ってるパパの会社の人が車でこっちに向かっているから、その人が着いたらすぐ一緒に帰りなさい、と告げられました。
迎えの車を待っている間、不安で怯えている私を、養護の女の先生がずっと抱きしめていてくれました。
その先生は迎えの車に一緒に乗って、私に付き添ってくれることになり、家に向かう車の中で何が起きたのかを話してくれました。
パパとママが車に乗っていて交通事故に遭い、2人とも死んでしまったというのです。
「えーーっ、そんなのイヤア、イヤア、イヤア!アーン、アーン・・・・・」
私は家に着くまで、その先生に取り縋って泣き続けました。
家に着くと、叔母夫婦が待っていましたが、そこで私はさらに衝撃的なことを告げられました。
家族同様にして飼っていたチワワのプルルンも、一緒に乗っていて死んでしまったというのです。
「えええーーっ、プルルンもなのぉ?」
プルルンは私が自分で名前をつけ、特別に可愛がっていたチワワ犬です。
この言葉を最後に、私はその後ひと月ほど、声を出せなくなってしまいました。
プルルンとはその日のうちに、パパとママととは次の日になって、私は遺体と対面しました。
どの遺体との対面でも、私はちょっと見ただけで両手で顔を覆い、首を振って身体をブルブル震わせているだけだったので、すぐ叔母が来てずっと抱きしめてくれていました。
その後のお葬式などにも、もちろん私は参列したのですが、まったく記憶がありません。
能面のようになって表情を全然変えず、魂を抜かれたようにぼおうっとしていたと、今の両親つまり当時の叔母夫婦に教えてもらったのは、つい3年ほど前のことです。