淡恋(前編)-5
僕はその男に食事やホテルに誘われた。スカートの中の太腿に触れられ、薄い女性ものの下着の
上から胸やペニスのふくらみを撫でられた。男にベッドに押し倒され、唇を貪られた。衣服を
剥がれ、全裸にされた僕は、全身の肌の隅々に、彼の過剰で淫蕩な愛撫を受けた。
彼の愛撫にいつしか烈しく悶え喘ぐ自分に、ふと気がついたとき、僕はいつまでも彼の愛人であ
り続けていいと思った。愛人になって、自分のからだを彼に貪られることで、僕の中に虚ろに漂
うものが、途絶え果てるような気がしたのだ。
そして、この男の愛人になった僕は、女性用の高価な衣服や外国製の優雅な下着を彼に買い与え
られた。ネックレスやイヤリングをし、男のいいなりに着飾ることで僕は以前の自分とは少しず
つ変わっていけるような気がした。
いつものホテルの部屋には、男の吐いた煙草の紫煙が薄い靄のように立ちこめている。淡い洋燈
の灯りが、どこか気だるくベッドの上の男と僕のからだを照らしていた。
嗜虐の性癖のあるその男は、ときには僕を縄で縛り、鞭や蝋燭を手にすることもあった。そして、
男に苛まれれば苛まれるほど、僕は心とからだに澱んだものから逃れられる気がした。
後ろ手に縛った僕を、男は背後から抱きしめ、胡座をかいた膝の上に乗せる。
男の堅く太いものが、両腿を割るように男の膝に跨った僕の臀部をまさぐり、ぬるぬるとした
生き物のように尻の下で蠢き、粘り気を含みながらぬめっていた。男は、僕の首筋を背後から
舐めあげながら、縛った僕の胸の花蕾のような乳首を指で摘み上げ、もう片方の掌で僕のペニス
をゆっくりと撫であげる。
男の厚い掌が僕のペニスから臀部の下に潜り込むと、僕の尻をわずかに持ちあげ、男のものを
挿入しようとする。ビクビクと撥ねる男の肉棒が、僕の狭隘な尻穴をとらえ、ぐりぐりと尻穴
を裂くように臀部のすぼまりを責め立てていく。
僕を背後から抱え込んだ男は、ぴったりと密着した僕の臀部の下で、腰を上下に烈しく揺すりな
がら、僕の尻穴をこじりあけようと肉根をねじる。
…ああっ…うっ…うっ…
太く固いものが粘着質の熱を帯びて、僕の臀部を割り裂き、すぼまりの奥芯へと襞の中を潜って
いく。男の膝の上に跨った僕の白い太腿の付け根には、ビクビクと堅く屹立し始めた僕のペニス
の先端が頭をもたげ、生白い肉が潤みを持ち始め、腿の付け根の肌が小刻みに痙攣を繰り返して
いた。
「いい気持ちだろう…女の穴より、おまえの穴の方が、すごく締まりがいいぜ…」
そう言いながら、男は腰の蠕動を繰り返し、僕の臀部の芯を何度も突き上げた。
つながりあったところから、生臭い男の体液の匂いが僕の肌に滲み入るようだった。彼の肉棒が、
僕の臀部のすぼまりの奥深い部分を突き破るくらい鋭く切り裂いていくことを、何の抵抗もなく
受け入れ、その快感を追い求める僕が、自分であって自分でないような気がした。