淡恋(前編)-10
「まあ…こんなにおチンチンをかたくして…あらあら、ペニスの涎までうれしそうに滴らせてい
るじゃないの……いやだわ…カズオさんって、やっぱり本物のマゾだったのね…」
陰気な笑いを浮かべた女は、ゆっくりと僕の正面に立ち、鞭を床に打ち鳴らす。
「そのおチンチン、あんまりうれしそうだから、鞭をあげるわね…」
ビシッー…
女が縦に大きく振り下ろした鞭の先端が鋭い光を放ち、僕の勃起したペニスと陰嚢の粘膜を
はね上げると、棘のような烈しい痛みともに、ペニスのすい液が飛沫をあげたのだった。
ひいいっー、ああっ…
弓のようにからだをしならせた僕は、けたたましい悲鳴をあげ、粘膜を引き裂く鋭い陰部の痛み
に白い両腿をにじり寄せ、烈しく痙攣する性器の痛みを、からだ全体で吸い込んだのだった。
嗚咽が口の中で押しつぶされ、頭の中が仄白い靄で包まれる…。
この女にマサユキさんは、どんな風に抱かれているのだろう…マサユキさんが、女に抱きしめら
れ、ふたりの裸体が絡み合う姿が、朦朧とした僕の脳裏によぎり、生あたたかい息苦しさと嫉妬
に似たものが、僕の中をゆっくりと爛れるように流れていく。
痛みに感じすぎ、赤みを帯びたペニスの先端から滲み出た透明の汁が、雁首の肉淵の溝をしっと
りと肉色に濡らしている。伸縮するペニスの芯を女に鷲づかみにされたような被虐の耽溺に酔っ
た僕のペニスは、痺れるような疼きに、すでにはちきれそうになっていた。
一瞬、僕はマサユキさんの嗚咽を、からだの奥深いところに湧き上がるように感じた。薄灯りに
包まれたマサユキさんの息苦しい吐息が、僕の耳の中で木霊のように響いてくる。
なぜか不思議で悲しい沈黙の光が、僕とマサユキさんのあいだに、切ない明滅を繰り返しながら
睦み合い、身悶えするように消え去ろうとしていた。
そのとき、僕は、幻影のように遠ざかるマサユキさんの淡い姿を追い求めながら、胸を締めつけ
られるような眩暈に深く堕ちていった…。