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「ガイア」
【ファンタジー その他小説】

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「ガイア」-1

『この常識外れの世界に慣れてしまったのは何時からだろう』
彼は思う。しかし、思い出せない…。
最初はギスギスしていた、と思う。今では信じられないが。
気付けば、自分はこの世界にどっぷり浸かっていた。だが後悔していない。むしろ充実している。
だから彼は立ち止まり、友に言った。
「ありがとう」
「え?」
彼の前を歩く友は振り返った、その顔には疑問符が書かれている。
「言ってみただけ」
そう言って彼は再び、少々早く歩き始めた。
その後を友が追う。
「…おかしいですよ、武流さん」
「いつもの事だろ、フィン」
「あはは、そうですね」
二人で街を歩く。
伸びた影が後について来る。
夕日が綺麗に燃えている。
武流と呼ばれた彼は思う。今はこの時を楽しめればいい。
そう、楽しめる時に楽しまなければ…。
いつ、別れが来てもおかしくない状況なのだから…。

 時は逆のぼる。
それは、武流とフィンが出会う頃まで。
物語は、二人が出会い、ある使命を背負う話。
できれば、二人を最後まで見守ってほしい。

 武流の家は山の中だった。
そこから見える景色は街を一望でき、夕日時は100万$の夜景なんかよりも綺麗と胸を張って言える。
あの夕日の朱に染まった街が好きだった。
だから今日も夕暮れ、外に出た。

 …違う。
周りが…紅に染まっている。
全てが紅蓮の衣を纏っている。
理解した現実はあまりにも非日常。
山が燃えていた…。
あとはよく覚えていない。
ただ、必死に逃げた。
両親は旅行に行っている、だから一人で逃げた。
炎にあぶられながら山を自転車で下った。
しかし、転んだ拍子に自転車が炎の中に埋まってしまい、武流は火の壁に囲まれ逃げられなくなってしまう。
…そして気を失った。
あるのは闇。
刷り込まれた火への恐怖。
そして、後悔。
…100年もないこの短い人生をこのまま終えてしまうのか?
そんなの…嫌だ!
だから、目に入る光をひたすら掴もうとする。が、届かない。掴めない。
もう手遅れか、いや違う。これは夢だ。違うとしても似たようなもの。
掴むのではない、手に入れるのだ!
光に手を伸ばさず、祈った。
その光が近づき、身体の中に入っていく。
…力が溢れて来た。
気力を振り絞り、目を醒ます。

 …気付けば、山火事は消え、代わりに老人がいた。
老人はがっちりとした体つきで、筋肉質。
背も高く、腰も真っ直ぐだ。
口元は白くて長い髭を生やしている。

「己が望んだ事だ、逃げずに運命に立ち向かうのだぞ」
「うん、めい?」
武流は聞き返す、老人は曖昧に答えを返す。
「まず、京都に行けぃ。全てを知るにはな」
そして老人が光になる。光の一部が武流の中に入り込んだ。
そして、光になった老人は空に向かって駆け登り、上空で無数の光の矢を縦横無尽に放った。
光は細かくなって、夜空に消えた。

 数日後、不思議な事が起きた。
山火事があった事を覚えている人が武流だけになってしまった。
あの老人も、再び会うことがなかった。
一つ一つ、また一つ。
日常が壊れ始めた…。
 さらに数日が経ち、息子の一人旅を心配する両親の元を離れた武流は京都に来ていた。家を出てはや8時間。予期せぬハプニングに武流は苦しめられていた。
「え?未成年」
「はい」
「…誠に申し訳ありませんが、保護者と一緒でない未成年者の御宿泊は受け付けてないんですよ」
「あ、そうですか…」
そう、宿がない。
武流は宛もなく歩き、目に着いた宿を片っ端から当たっては砕けているのだ。
「世の中甘く見てたなぁ…」
一人ぼやく。
早く宿を見つけないと補導される危険性も出でくる。
旅行初日に、親へ助けを求めるのは恥ずかしい事この上ない。そして、警察から連絡された方がもっと恥ずかしい。
武流はこの人生最大の危機をどう切り抜けようか考え、歩いていた。

 ふと、あまり目立たない一つの看板を見つける。
「法玉寺。宿、あります。お寺?」
武流は不思議に思う。しかし、背に腹は変えられない。
『宿泊代と座禅程度ならなんとかなるだろう』と考え、足をそちらに向ける。
「ま、事情話せば情けで泊めてくれるかも。お寺だし」
少々偏見のある考えを持って歩いていく。


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