春の夜の夢-2
それから数日後―
俺と美緒はいつものように家に向かって一緒に歩いていた。
「最近、怖い夢ばっかり見るの。」
「へぇ、そりゃ大変だ。」
「ちょっとぉ、本当に怖いんだからぁ!夜中に目が覚めちゃうし…」
「眠りが浅いんだよ。寝る前にホットミルク飲むと良いらし―」
「だから、これから毎晩鍵開けておいてよっ。」
「はぁっ?なんで?親の部屋行けばいいだろ?」
「いい年して親に甘えられないもん。ねぇ?」
まただ。美緒が腕ぎゅっとしがみついて、紺色の制服越しに柔らかなマシュマロを押し当ててくる。俺にはこうやって甘えるのかよ。
俺の部屋に来たら、美緒はまたこうやって甘えてくるだろう。もしそうなったら、俺は―
「んだよ、それ。」
「それに、涼の部屋の方が近いし♪お願いっ」
「わかったよ。おまえはちゃんと鍵閉めて寝ろよ。」
「やった、ありがとう!」
俺らは玄関先で別れた。
そしてその夜―
俺はいつ美緒がやってくるか知れないという妙な緊張感からなかなか寝つけずにいた。
やがて深夜の一時…
あ、そろそろ俺眠れるかも…と思ったその時、
ガラッ!!
勢いよく窓が開いて、美緒が忍び込んできた。
「うわっ、ビビった…ノックぐらいしろよ」
今日はいいが、男には見られて困ることがたくさんある。飛び起きた俺は眠気もどこかに吹き飛ばされてしまった。
「こわかった…」
美緒がベッドに駆け寄り、俺の首にきつく腕を回す。
…バリバリ胸当たってるっつーの。柔らかい髪からする甘い香りが鼻腔をくすぐる。
しかし相当怖い夢だったのか、少し震えている冷たい体を温めてあげたいと思った。
背中をさすってやると、薄いTシャツの生地からブラのホックに触れてしまう。
(―っ!!)
たったそれだけで、俺の血液が沸騰してしまう。
「…美緒、ホットミルク飲むか?」
「…うん。」
俺は美緒の背中に毛布を掛けてやり、部屋を後にする。
セーフ。ズボンの中で俺の欲望はすっかり堅くなってるけど、ギリギリセーフだ。あのままだったら、間違いなく手荒に美緒の体を貪ってしまっただろう。これからも長い付き合いだし、大切にしたい。
安堵に胸を下ろしながら、牛乳をマグカップに入れ、電子レンジのあたためボタンを押した。