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Time
【ファンタジー その他小説】

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Time-2

母さんが家を出ていった時
初めてキスをした時
バイト先で叱られた時
親友が結婚した時
テストで100点を取った時
…そして、ラブが、
「うわぁっ」
ラブがいきなり立ち止まったので、しっぽを踏みそうになった。
「どうしたんだ…よ」
ラブの目線の先にあった僕の思い出。
それは、僕の最後の記憶。
そこに映っていたのは、言い争う男女の姿だった。
彼女は、彼の頬を叩き、涙をこぼしながら部屋を出ていった。
負けず嫌いで気が強い彼女の涙を見たのは、初めてだった。
…僕は、しばらく動けなかった。

式まで一週間を切ると、やっぱり、いろいろ不安な事も出て来るんだろう。
とっても些細な事だったのに、今なら、彼女の気持ちもわかるのに、…なぜ、わかってあげられなかったんだろう?

彼女を追って部屋を飛び出した僕は、マンションの前の道路で、車に…
そうだ。
思い出した。
僕は、車にひかれたんだ。
「…ラブ、僕は、死んでるの?」
ラブは、首を傾げる。
「…死んだから、ラブがいるの?」
ラブは、何も言わない。
ただ、黙ってきちんとお座りをしていた。

彼女を傷付けた、当然の報いなのかもしれない。
…今なら、素直に謝れるのに。

「…もう、戻れないのかな?」
僕は、ラブを抱きしめ、泣いた。
「やり直したいよ、…もう一度」


――ピピッピピッピピッピピッ

「ん…」
目が霞む。
頭が痛い。
…白い天井。
ここは、…病院?
ゆっくり起き上がる。
体中が痛い。

ガシャン

何かが割れる音に驚き、音の方を見る。
扉の前で涙を浮かべていた彼女が、僕に抱きつく。
僕の目にも、涙がにじんでいた。
僕は、生きている。
…ラブ、ありがとう。

僕は、彼女を抱きしめ、そっと言った。
「…ごめん」


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