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ラプンツェルブルー
【少年/少女 恋愛小説】

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ラプンツェルブルー 第11話-6

「……わたしも彼女と同じ」

もうひとりの『現実』のラプンツェルは、自らを『1幕目』と配役した。
出逢った王子に手を牽かれ、逃避行を夢見る他力本願な塔の閉じ篭り姫。
だけど1幕目で出逢った『王子』は荊のツタを塔に運んでは来なかった。

「津田くんと会わなくなって、連絡も取らなくなって、ずっと考えてたの」

背中を見守るまま、泣き出しそうな声が続ける言葉を待つしかすべはなく。

「あれからお姉ちゃんと先生の事を不思議なくらい落ち着いて見られるようになったのは」

痛々しいくらいの独白。
知らず両の拳を固く握ってしまうほどの。

「きっとわたしを塔から連れ出してくれたのは……」

続ける言葉が震える。

それが僕のリミットだった。

肘に触れたままの細い指を握り返して彼女を振り向かせる。

「あの時勢い任せっぽかったから、も一度言ってもいいか?」

驚きに見開かれたヘーゼルナッツの双眸から、きらり。春の光を集めた二つの雫。
相変わらず静かに泣くんだな。
と、これから再び告白しようとしている傍らで、どこか冷静な僕が彼女を見つめている。


「早川が好きだ」

たっぷり10数えるだけの空白のあと、ようやく一度だけしゃくりあげ、こくり。と頷く。

「わたしが、あの穴から出ることが出来たのは津田くんの荊のツルのおかげなんだと思う」

見つけてくれてありがとう。と微笑み、濡れて輝きを放つヘーゼルナッツの瞳はゆらゆらと僕を映しながら再び春の光りを集めた雫を落とした。

現実のラプンツェルは3幕目を迎えたのだった。



おとぎ話は、とかく無駄なアクションが多い。
例えば、寝物語にかあさんが読んでくれた『高い搭に閉じ込められた女の子』の話。

僕はその話を読み聞かせられる度、いらいらしていた。
男の僕に何故、女の子の話なのか。
もちろんそれもあるけど、僕が一番苛立ちを感じていたのは、『閉じ込められっぱなしの女の子』にだったのだ。

そして、『いらいらするばかりで何もできずにいた僕』も、ひとりくらいなら塔から解放できるのだと。
傍らで微笑むその人に教えられて。
改めて思うのだ。

おとぎ話は、とかく無駄なアクションが多い。

でも、それは僕らにチャンスをチラつかせているからかもしれないと。

故に繰り返す。


おとぎ話に、とかく無駄なアクションが多いのは、多分……。


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