ZERO-3
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「えっ………?」
「な………!」
翼に降り立ったその人物は……女だった。
何が出てくるかと身構えてた俺はまたまたビックリで声もでない。
年齢はハタチくらいか?鼻筋の通った整った顔はどことなく幼さを残していて、美しいというより可愛らしいと形容した方がぴったりくる。飛行帽からのぞく髪は肩甲骨くらいまである長い黒髪だ。二重で濃い茶色の瞳は俺を見て驚いてるようだ。
「あ、あんた何モンさ?」
「へっ?あ…え〜と何モンでしょう?」
突然話しかけられたもんだからまともな返事など出来たもんじゃない。
「あ?ふざけてるんでないべさ!」
「『べさ』?あ、いやふざけてるんじゃないんですけど…」
『べさ』?ココは北海道か?いや、確か今は2月だった。何で雪がないんだ?っていうか麦なんてこの時期にあるわけねーぞ?
「…ってねえ!あんた!」
「あ、何でしょう?」
考えごとをしてたら彼女は翼を降りて俺の目の前にいた。身長は170センチ強ほど。着やせするタイプなのか胸は余り出ていなく、その背とあいまって男みたいだ。白い飛行服の右肩には撃墜マークと思わしき物が6つも付いていて、左胸に『MIYAKO』の刺繍がしてある。
「何でしょうじゃないさ。…あんたもしかして『裏側』の人か?って聞いてるのよ」
「裏側の人?」
「そう。この世界の裏側の別の世界」
そんなアホな…。出来の悪いB級映画じゃあるまいし…。
「そ、そうじゃなきゃそんなカッコしてないもんね」
「そんなカッコって…な、なんじゃこりゃ!?」
気付かなかった…。当然と言えば当然なのだが俺は寝たときの格好、ランニングとトランクスのまんまだったのだ。これじゃあまるで変態である。
「あっ、これは…その…」
俺が股間を押さえてもじもじしてると、彼女も顔を赤くしている。最初驚いていたのは俺の格好に対してのようだ。
「そ、そういえば昔おじいちゃんが裏側の人に会ったとき、その人もステテコとシャツだけだったって言ってたわ…」
「えっ、昔って前にもだれか…じゃなくて何か着る物ありませんか?」
「あるわよ。まあ家の中入んなよ。夏だからってそのカッコは寒いべさ」
そう言うと彼女は飛行帽とゴーグルを取り、長い黒髪をかき上げて格納庫のほうへさっさと歩きだした。住居も兼ねているらしい。
…そういえば彼女は『夏』と言っていた。確かにこんな格好でもさほど寒くはない。しかし…確かバレンタインデー(玉砕)が終わったばかりだったはず…。
「あのぅ…、今何年何月ですか?」
俺は戸口に立って彼女に訊いた。もしかしてタイムスリップでもしたんじゃないかと思ったのだ。
「えっ?今日は2004年8月3日だけど…」
ガーン!と音が聞こえたように思える。8月?2月から8月ってどうゆうこっちゃ…。
「はははは…こりゃだめだ。変に楽しくなってきた」
「なに言ってるのさ。これぐらいしかないわ…とりあえず着てみて」
オカシクなりかけてる俺を軽くあしらって、彼女はブルーの煤けたツナギを俺に突き出した。