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ZERO
【ファンタジー その他小説】

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ZERO-2

【1】《黄金色の麦畑》

「俺は…、あれ?」
ガバッと起き上がると、目の前に広がる麦畑。それは500メートルばかり先でとぎれ、空が広がっている。周りを見渡しても、同じように黄金色と蒼が線を成している。俺は小さな台形をした丘の上の麦畑に寝ていたようだ。
「はて…?」
…変である。確かに昨日は自分の寝台に潜り込んで寝たのを覚えている。
「随分リアルな夢…にしては妙だな…」
オォォォ……
一人ごちていると、風にのってうなるような音が聞こえてくる。
それは、だんだん大きくなってエンジンの音だと脳が認識した。こちらに近付いている。
周りを見渡すと、大きな白い入道雲をバックに、小さな黒い点を見つけた。それは徐々に形を成して飛行機となり、近付いて来る。
ゴオオオオ……
切れ目がないそのエンジン音。シリンダーを円形に配した『星型エンジン』独特のものだ。

ガアアアオオオオォォォォ……

…俺は最初、自分の目を疑った。次に、ひとりSMじゃあ無いんだが、頬をぶってみた…。

夢ではない。たった今俺の頭上を飛んで行ったのは、日の丸をつけた旧日本軍の戦闘機だ。
「なっっ!?」
ぶったまげて、声も出ない俺の頭上を『ソレ』は脚を出し、旋回しながら降りてくる。麦畑の上スレスレまで降りてきた『ソレ』は、吸い込まれるように黄金色の中に降りたった。
「ア、ありゃ何なんだ?どーなってんだぁ??」
俺は訳が分からないまま、とりあえずあの戦闘機の所へと向かった。

着陸した戦闘機はいつの間にか滑走してきて、俺から20メートル程のところにいる。
スマートな深緑の機体に赤い日の丸。黒いエンジンカバーと3枚のプロペラ。麦をかき分け進みながら俺は確信した。
『ソレ』の名は零式艦上戦闘機。
「ゼロ戦だ……」
連合軍のパイロットから『ゼロファイター』と恐れられ、『ゼロとのドッグファイトだけはやるな』とまで言われた伝説の戦闘機。本来一人乗りのところが、二人乗りになってるところは妙だが…。
「何でゼロ戦が……」
麦をかき分けて近付いてみると、そこは畑の中の滑走路になっていた。舗装はされてないが地面が踏み固めてある。さっきは気付かなかったが、ちょうど機体が収まるような木造の格納庫もそばにあった。
ガチャリ。ガーッ。とゼロ戦のほうから音がした。ギクッとしてそちらを向くと、ちょうどパイロットがキャノピーを開けて出てくる。俺は咄嗟に身構えた。


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