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ZERO
【ファンタジー その他小説】

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ZERO-10

☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 天気は快晴、風も微風。絶好のフライト日和だ。
 アホな作者のせいで読者の皆さんには俺の自己紹介をしていなかった。
 俺の名前は羽田雄飛。(都が間違えるので混乱したかもしれないが…)
 実は航空自衛隊の三尉でF15Jイーグルのパイロットなのだ。
 実際パイロットになった動機は不純で、ただ子供のときから飛行機好きで戦闘機に乗りたいってだけだった。だもんで、学科が悪かった俺も『好きこそ物の上手なれ』ってな風に操縦の方はめきめきと上達して、同期の連中がポンコツF4J改に乗っている中でF15の座席を獲得したのだ。
 朝起きてからその事を都に話すと、なんと俺が今日の操縦をさせてもらう事になったのだ。もちろんゼロ戦は初体験だ。(←サブタイトルに期待した人は御免なさい)
 そんな俺。朝からウキウキして落ち着いてなんかいられない。
「フフ、そんな焦らなくても…」
「焦ってなんかいないよ。ただ興奮しちゃって…」
「じゃあパイロットさん、格納庫から飛行機出してエンジンかけて頂戴」
「よしきた!」
 ゼロ戦の脚にワイヤーをかけて引っ張り出すと、太陽を浴びた深緑の機体はにぶく輝く。
 ゼロ戦は本当に綺麗な飛行機だ。たとえて言うなら、鍛えられて引き締まった肉体のボクサーだろう。闘うために生み出されたそれは機能美に満ちあふれている。
 ワイヤーを外し、脚に車止めをかける。コックピットのスイッチをひねってエンジンを始動……。
 ……ガラガラッ、ガッ、ガララララ―――
 少し咳き込むようにしてエンジンが目覚めた。
 機体から離れ、エンジンが温まるまでしばし待つ。
 都が飛行服に着替えて出てきた。
「ちゃんとかかったみたいね」
「良く整備されてるよ。もう少し苦労するかと思ったけど」
「むこうに着いたら香川のじいさんに言ってあげな。喜ぶよ。…あぁそう、香川さんって人が整備してるのよ」
「ふ〜ん。自分ではいじらないの?」
「少しはやるけど、じいさんに任せれば間違いないから」
 …そろそろエンジンも温まってきただろう。コックピットに入り、水温計を確認すると針はちょうどいい所を指している。
「よし、準備OKだ」
「じゃあ、おねがいね」
 …都が車止めを取って乗り込むのを確認し、スロットル(※車のアクセルだ)を少しふかすと機体はゆっくりと進みだした。
 格納庫は滑走路の中ほどにあるため、まず端まで移動する。滑走路は800メートルほどしか無いが、船(※航空母艦、略して空母と言う)から飛び立つようにできているゼロ戦には十分だ。
 端まで来て180度回転させると離陸準備完了。
「何キロで引き起こすんだっけ?」
「ちょっと大丈夫?250だよ」
「確認しただけだよ」
 …キャノピー閉め、フラップ(※補助翼)、エルロン(※機体を左右に傾けるための動翼)、ラダー(※舵)、エレベーター(※水平尾翼)良し。スロットル全開だ。
 ガアアアァァァ―――
 ゼロ戦は勢いよく走り出す。…150…180で、少し操縦桿を前に倒して機体の尻を持ち上げる。
 …230…250…少し余裕を持たせて270キロになった。ジワッと手を引くと、いとも簡単に機体は浮き上がった。
 旋回しながら高度をとる。島が小さくなって1500まで来た。
「…上手いわ。お手本みたいな離陸だね」
「ありがとう。で、どっちに行けばいいの?」
「方位030、北東よ」
「了解、機長。方位030に旋回します」
「はい、よろしい♪」
 まばらな雲と、空に浮く島々を下に上に見ながら飛んで行く。……そういえば島はどうやって浮いているのだろう。昨日それを都に訊くと、
「あんまり考えたこと無いわ」
である。それに、風に吹かれても移動しないと言うのだからヒジョーシキな世界である……。
「人の操縦で飛んだの久し振りだわ」
「おじいさん以来かい?」
「そうね、18の時が最後だから4年前以来だべか」
「…22なのか…」
「言ってなかったっけ?」
「レディーに歳は訊かない物なんでしょ」
「そっか…。幾つだと思った?」
「20ぐらいかなって…」
「怒るよ」
 どっちにしろ怒るんじゃねーか……。


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