告白-2
コンコン…「失礼します。」
教官室の本棚には、見覚えのある雑誌が多く並んでいた。
そうか…江口はこいつと話を合わせたくて科学雑誌なんて読んでいたのか。
そんな乙女心が、いちいち胸をざわつかせる。そこのソファで江口はきっと…
「えぇと、君は…」
「―A組の橋本です。先生の授業は受けたことがないので、僕のことはご存知ないかと。」
「そうか。何か俺に用?」
「今日は江口さんのことで来ました。」
「…江口がどうかしたか?」
「それは先生が一番ご理解なさっていると思いますが…時間がないので単刀直入に言います。彼女との”実験”をお止めいただきたい。」
それから俺は、彼女を痴漢から守るために登下校を共にしていること、彼女のことを深く想っているということを手短に伝えた。相田は、表情ひとつ変えないで聞いている。
「へぇー、電車の中で彼女を痴漢から守っている…それだけか?」
「…はい、それがなにか。」
「いや、それだけじゃないはずだ。俺の予想が外れていないのなら、君は江口と男女の関係にある。どうだ、図星だろう?朝からアイツは女の香りをぷんぷんさせているんだ、気付くに決まってるさ。すれ違うだけで香る雌の臭い。あれは、男の理性を崩壊させる危険な香りだ。彼女は達すると匂いがより強くなるだろう?」
「―っ、話をそらすな。彼女の気持ちを弄んで、教師として恥ずかしくないのか?」
「…君は彼女が実験に同意をして、自らここに足を運んでいるということを知ってるか?君が説得すべきなのは俺ではなく、彼女の方だ。」
「……じゃあ―」
「時間が無いんじゃなかったのか?」
「…失礼します。」
俺は言葉を飲み込んで教官室を後にした。