その三 挨拶-1
挨拶
「じゃあ、また明日」
「ああ、じゃあな」
帰り道、ぼくは友達の孝之君と家の近くで別れた。
孝之君は時々振り返りながらもなんども手を振ってくれる。
きっとまた明日も一緒に帰るんだろう。
ふふ、
すごく嫌だ……。
〜〜
幼稚園の頃から小学校、中学と、ぼくと孝之君はいつも一緒。
家だってすぐ近くだし、顔を合わせない日はないんじゃないかな?
そりゃ子供の頃はよかったよ。
いっしょに公園にいって追いかけっこしたりしてたし、お泊りだってしてたしさ。
でも小学校の高学年になった頃からなんか孝之君ってば嫌な感じがしてきたんだよね。
きっかけはクラスの子に言われたことが原因なんだけどさ……。
『孝之と光雄ってホモなの?』
最初、ホモの意味がわからなかった。先生に聞いたら「ホモ・サピエンス」とか難しい言葉を言われただけでさ、それでも周りの子、女の子とかも普通に笑ってくるんだよ。
でさ、内緒で聞いたんだ。ホモの意味。
そしたら男同士で好きになる変な人って言われたんだ。
冗談じゃないよ。ぼくは普通だ。男同士で好きになんてならないよ!
そういったんだけど、皆止めてくれないんだ。
それからさ、だんだんそういうの酷くなってきてさ……。
だからぼく、皆と違う学校に行くために猛勉強したんだ。
私立の中学校。
合格したときは嬉しかったんだ。
けど、卒業式の日に言われたんだ。
『春からは違う学校だけど、友達でいような』
って……。
それってぼくの台詞でしょ? 誰にも話していないんだよ、ぼくが私立の中学に行くことって。
そういいかけたとき、わかったんだ。
孝之君もぼくと同じ私立の中学を受けて、合格したんだって。
だってここらへんで私立の学校なんて一つしかないもん。
そしたらそれを聞きつけたクラスの子がさ、言うんだ。
『わざわざ私立までいって二人きりになりたいのか?』
ってさ……。
……ああ。
なんでこうなんだろ。