ありのままにそのままに-3
2 ある国に、一人の王子様がいました。彼は、全部で12人いる王子の中で、一番末っ子でした。といっても、なにしろ12人も王子がいるので、あまり目立つ存在ではありません。末っ子というと、甘やかされて育つのが普通ですが、その王子は例外で、厳しく育てられました。
しかし、やがて王子は自分の生き方に疑問を持つようになりました。
「私は、王子といえど、十二番目の忘れ去られた王子。将来王様になれるわけでもないのに、なぜこの様に拘束されなくてはいけないのだろう…」
王子の生活は、自由がなく、つまらないものでした。王子は好奇心がとてもあったので、市にも一度行ってみたかったし、他の国にも行ってみたいと思っていたのです。もちろんそれが許されるはずもなく、苦い思いをしていたのでした。
〜2ページ目〜
「…私はいっそ、平民になりたい。」
王子は、そのように思いました。しかし、まさか王様にこのことを頼むわけにもいかず、しばらく王子は機会をまっておりました。
そんな王子に、チャンスがきたのは決心してから一ヶ月後のこと。なんと、隣国の王女との、縁談の話がもちあがったのです。
この国は、隣国とは長い間、あまり仲が良くありませんでした。戦争をしては停戦し、また戦争をする…その繰り返しがこの二つの国の関係だったのです。しかし、今度の縁談を機会に、お互いに仲良くしていこうということになりました。そこで、二つの国は国をあげてこの縁談を祝ったのです。
一方、王子は見たこともない王女と結婚する気はさらさらなく、これこそこの国を抜け出すチャンスだと考えました。