ありのままにそのままに-2
「僕は、右へ行く。君は左だろう?」
旅人はうなずきます。せっかく出会った仲間と別れるのは、少し名残惜しい気がしましたが仕方ありません。ここでお別れでした。ここからは、それぞれ、また別の道を歩まねばならないのです。
猫が、自分の首にさげてある袋から、おもむろに何やら取り出しました。紙切れのようなものでした。それを旅人に渡します。
「……これは?」
「ちょっとした紹介状さ。君が店に行った時に、店の人にそれを見せなよ。きっと雇ってもらえるから。」
猫はそう言うと、さっさと右の道を歩き始めました。
「ま、待って!」
旅人は猫のあとを追いかけます。猫は立ち止まって振り返りました。
「…君の、名は?」
猫は、あぁ、とつぶやくと、
「メテオ。」
とそれだけ言いました。
「俺は、セイジというんだ。どうもありがとう、メテオ。」
猫はしっぽを一振りすると、振り返らずにゆっくりと去っていったのでした。
その後、旅人は、猫に貰った紹介状のおかげで、無事に雇ってもらうことができました。紹介状は、ある国の王子の紹介となっていました。もちろん偽物ではなかったのですが、なぜ猫がそのような物を持っていたのか…?それは、セイジには到底わからぬことでした。
ただ、セイジは、またいつかあの猫に会うような、そんな気がしてならないのでした…