その二 120°-4
**――**
「それじゃあ、最後の一枚は兵隊さんにどうぞ……」
健一はそう言うと、最後の一枚をラップに包んで、居間の上座に置いて拝む。私も釣られて拝むことにする。
「……さ、これでおしまい。あとは兵隊さんが食べるから、僕らは邪魔しないように部屋を出よう」
「え? もういいの? お祓いとかは? なんかこう、十字切ってえいやーとか……」
「そんなの必要ないよ。兵隊さんは恥ずかしがりやだから、僕らが居たら食べられないよ。純ちゃんに見つかるのだって恥ずかしいんだしね」
言われてみればそうかもしれない。絶えず視界の端にしか映らずにいたわけだしね。
私はもう一度ピザを拝んだあと、健一に続いて部屋に行った。
怖いとかじゃなくて、邪魔しちゃ悪いと思ったからだからね。
うん。
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あくる日、居間にはラップが外された冷めたピザがあった。
きっと食べる雰囲気だけで兵隊さんは帰っていったのだろう。
もう視界の端には見えないし、私はほっと一息ついて、朝食の準備を始める。
さすがに今回だけは健一のおかげで何とかなったしね……。
うん、腕によりをかけて作ってあげようと思う……。
++――++
やれやれ、純ちゃんは騙されやすいなぁ……。
きっと見えたのは飛蚊症だと思う。夜更かしなんかするとよく見るし、棒みたいなのが見える。余計な話をしちゃったのと、夜に怖い話を見たのが原因かな……。
こういうときって下手に理屈で説明するよりも、むしろ踏み込んで除霊の真似事したほうが丸く収まる。イワシの頭も心神からってことでね……。
……でも、結構大きくなったなぁ……。昔はぺったんこだったのに、あんなになって……。ま、役得ってことでね……。
完