ポートセルミ編 その二 出会いと別れ-7
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洞窟の中は意外と明るかった。人工的な作りが見られ、窓らしき穴が高い場所にいくつかあり、そこから明かりが差し込んでいる。
切り立った崖を壁伝いに歩き、軋む縄の橋をゆっくり渡る。
魔物の棲家ということもあり、訪問者を威嚇する気配がまばらにあるが、あまり好戦的というわけではないらしく、リョカ達を妨げる者は少ない。
「なんか思ったより広いのね」
リョカに手を取られながら、アルマは言う。
「うん。でも、一体ここはなんなんだろうね。魔物が作ったにしては手が込んでるし……」
上を見上げ、差し込む光を手で遮る。
「そうね。なんかいろいろ落ちてるし……」
アルマはふとリョカの足元に光るものを見つけ、それを拾う。
「小さなメダルだ。うふふ。これ集めてる子いるんだ。なんかパジャマもらうって言ってたからあげようっと……」
アルマは嬉々としてそれを鞄にしまうと、他に無いかと地面を探す。
すると、今度は白くて硬いものがあり……。
「なんだろ、これ? ……きゃぁ!」
それが古びた骨であるとみるや、アルマは骨を放り投げる。
「わ、大丈夫? アルマ……」
「え? ええ……、ちょっと驚いちゃって……」
瞬間のことにアルマはリョカの胸に飛び込んでいた。その硬い胸板に抱きとめられていることに気付き、頬が赤らむのがわかる。
「アルマ、やっぱり君には無理だよ。ね。悪いことは言わないから外へ出よう」
「嫌よ、ここまで来て……。怪物なら捕まえた後に見せてあげるから、だから……」
リョカは彼女を諭すように言い、その武器を握るには非力な指を見る。
「お願いだよ。君が傷つくところを見たくないんだ。それに、危ない目にも遭わせたくない」
まっすぐな瞳に見つめられ、アルマはこれまで必死に耐えてきたことが押えられなくなる。
「リョカ……、あのね、私本当は……」
「ん!?」
二人の戸惑いの最中、住処を荒らされたと憤る住人が怒りを示す。
鋭い一撃がすんでのところでリョカの居たあたりを掠めた。
「伏せたまま……。そこだ!」
リョカは気配のほうへ鋭い風の刃を飛ばす。
「ぎぃ〜!」
こうもりの変種であるドラキーがひらひらと逃げ惑う姿を見て、リョカはそっと立ち上がる。
「ふぅ……大丈夫だよ」
「あ、うん……」
胸の中でまだ蹲ろうとするアルマに、リョカは暫くそうしていたいと思うが、次は威嚇で終りそうにない状況に、彼女を無理やり立たせる。
「さ、もう遊びは終わりだ。アルマ、僕の言うことを聞いてね……」
「は……はい……」
凄みを利かせたリョカの声にアルマは素直に頷く。そして彼に促されるままに橋を渡り、来た道を戻る。
しかし……。
「ぎぃ、ぎぃ!」
「ふぅ、はっ!」
群れを成してやってきたドラキーにメタルライダー達。
ドラキーはアルマの行く手を阻むように彼女の頭の上を飛び回り、メタルスライムの亜種に跨るライダーがめちゃくちゃに剣を振り回す。
「くっ! はっ!」
リョカはそれを捌きながら、アルマを庇う。しかし、狭い足場では思うように動けず、防戦一方。
「……ふっふっふ……、わてらの住まいを荒らそうなんざ十年早いってばよぉ……。さっさと帰らないと、もっと怖い目に遭わせるでぇ……」
「帰ろうにも邪魔してるんでしょうが!」
どこからともなく聞こえてくる声に、アルマが言い返す。