二人の距離-3
電車から降りて、再び謝る。
「変なことして本当ごめん!」
「…いや、俺が勝手にこうなっただけだから!」
「そ、そのっ…治まる?」
「あぁー、冷たい空気あたったから大丈夫。ご心配なく!」
変な空気にならないようにって、お互い変に空元気だ。
「かなり密着しちゃってたもんね、体。よく我慢できたねっ、偉い!」
「なんだよそれ、褒めるとこか?(笑) 快眠保障するって約束しただろ?…でも結構辛かったんだぞー?」
「えっ…」
二人とも急に真剣な表情になる。
「寝てる江口見てたらさ…っていうか、江口から漂ってくる匂い嗅いでたらさぁ、なんか、こう、たまらない気分になってくんだよ。痴漢も、その香りに誘われたんじゃないのかなって、本気で思うし。」
「…香り?」
「そう、香り。明日の朝、多分また江口に触ってしまうと思う…そのときはごめんな。」
気がつくと、私の家の前まで来ていた。
「…あっ、私の家、ここだから!送ってくれてありがとう!おやすみっ!」
「あっ、駅で待ってるから、ちゃんと来いよ―」
私は橋本クンの言葉をさえぎるようにして家のドアを閉めた。
そのまま、ぼーっとしながらリビングのソファに腰掛ける。
香り?一体なんのこと?
先生もこの前言ってたような…今まで誰にも言われたことなかったのに。
…痴漢も、橋本クンも、私から誘ってたってこと!?
痴漢も、今日のが初めてだったし…先生とヤッてから、私やっぱり淫乱になって、それが匂いとなって体からあふれ出ちゃってるのかな?…
「咲希ー?お風呂入っちゃいなさーい。」
お母さんの声によって意識が呼び戻される。
「…はーい。」
橋本クンに、触る宣言されちゃったなぁ。
替えのパンツ、持ってったほうがいいかな…
私はそんなことをぼんやりと考えていた。