憎しみと愛、そしてセックス(2)-1
(2)
いつ頃に夫と肉体を交わったのかさえ、
暫くは思いつかない美紗子である。
美紗子が夫と結婚したのは見合いだった、父親が熱心に勧めたからである。
それはどちらかというと、彼女の幸せを願ってと言うよりも、
実家の存続の為の打算と言っても良い。
彼女の実家は或る程度の資産家だったが、それ以上の欲が親にあったからである。
故に美紗子は、まだ二十代になったばかりで結婚したのである。
夫が美紗子の身体を求めたのは、新婚の頃の数年だった。
浮気性の夫は美紗子が身ごもると、公然と浮気を始めたからである。
しかし、
二人の子供を生んだとは言え、
まだ若い三十代半ばの美紗子には欲望が潜んでいた。
彼女は一見して細めの身体をしているが、
裸になればその美しさに驚かされる。
豊かにピンと張り出した大きめの乳房は、
葡萄のようにたわわに揺れ、
乳首は柔らかく処女のように薄いピンク色で、男なら吸い付きたくなる。
普通は二人も子供を生んだ女性なら、
乳首は、このような透明感はない。
大体は年齢を重ねるほど、その色は濃くなり、くすんでくるし、肌も荒れてくる。
しかし、なぜか彼女はそうではなかった。
それが、子供に母乳を授けなかったせいか、それは分からない。
体質的なモノか、或いはあまり吸われなかったからなのか。
更に言えば、腰はくびれて下腹は出ず、
そのわりには、丸くふっくらとした尻は男の情欲をそそる。
全体的に色が白く、ふっくらとした美紗子は熟れ頃の肉体を誇っていた。
美紗子は美しい、美しすぎる・・・と言っても良い。
端正で小さな顔立ち、
穏やかな眼差しと、微笑んだときの優しいふくよかな頬。
化粧をしていなくても、人を引き付ける魅力を持つ女しょう、
それが、少し化粧をしただけで、艶やかに更に磨きが掛かる。
しかし、彼女はあまり化粧をしない女である、
というよりも家では殆どしていない。
「こてこてとあまり付けずに、素肌を大事にしてこそが、女の身だしなみなのよ、
女とは見た目でなく、こころ・・美しい気持ちを持てば自然と輝くものなの」
と・・美紗子は古風で美しい母から前に、教わったことがある。
彼女は、肌の手入れには気をつけていた。
だがそれはごく自然な方法である、朝起きたときの冷水で顔を洗うとき、
その冷たさで気を引き締め、マッサージをし、
きめが細かい肌は、少しのクリームと化粧水をつけるだけで十分である。
出かけるときなどは、口紅も薄目ではあるが、それでも唇に引くだけで引き立つ。
遠くで見ると何もしていないように見えるが、
それが彼女をいっそう上品に見せた。