俺とアイツとの通学電車-2
「ごめんな、江口、もっと早く気付いていれば…」
江口は、小刻みに震えていた。
――――――
怖かった。とっても怖くて、鳥肌がたつほど嫌だった。
電車に乗ってすぐ、おしりに当たる手に気付いた。
はじめは、気のせいかと思っていたけど、その手がだんだん前に回ってきて、少しずつセーラー服の中を這いずりあがってきた。
(いやっ、やめて…)
恐怖で目をあけることも、声を出すことも出来ない。ただ分かることは、荒い鼻息が耳もとにあたっていることと、ブラの上に到達した手がゆっくりと胸を揉み始めたことだけだ。
―やだよ、なんで…なんで痴漢されてるのに…
私の体は誰のものかもわからない手によって陵辱されているというのに、敏感に反応してしまっていた。ぎゅっと目をつむり、下を向いて快感に支配されないように必死に耐えた。
ブラの上から鷲掴みにされて、乳首がしこり始めている。そしてそれに気付いてしまった痴漢は、乳首をくにくにと刺激し、『おねぇちゃん、かんじてるのぉ?』とねっとりとした声でたずねてきた。
(たすけて、…橋本クン、たすけて…)
私は振り返り、橋本クンに助けを求めた。霞んだ視線の中に、息を飲んだような表情の橋本クンを見た。
私を見て、すぐに何が起こっているか察したようで、混雑した車内をかき分けてきてくれて、後ろにいたおじさんを追い出した。
橋本クンは私を助けてくれたのに、ずっと何か後悔しているようで、しきりに謝ってくる。橋本クンは何も悪くないよ?
…やだな。まだ体の震えがとまらないや。
『大丈夫か?』とメガネの奥から優しい視線を送ってくる。
―あぁ、そうだ。橋本クンはどことなく先生に似てる。だから私、橋本クンとは仲良くできたんだ…それに気付いた瞬間、涙が零れ落ちるのを止められなかった―