秘密-2
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最近の江口は、なんかおかしい。
元々ぼぉーっとしがちな子ではあったけど、最近は悲しそうな顔をしたり、急に顔を赤らめたかと思えば、また不安そうな顔をする。
それだけじゃない。江口は、前よりも綺麗になった。元から細身だけど、スカートから伸びた足や腰なんか、さらにきゅっと締まったし、それなのに・・・胸は豊かに膨らんでいる。あんなに大きかったか?
今だって、アイツは肩肘をついて呆けているが、机に押し付けられた胸は、ふにっと柔らかそうに形を変えている。それは以前までは見れなかった光景だ。
俺はずっとアイツを見てきたから分かる。江口、・・・恋してるんじゃないのか?
知らない誰かに、女にされてしまっていたとしたら?それでこんなに急に綺麗になって・・・そんなことは絶対に考えたくない。
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放課後の図書倉庫・・・
「橋本クン、本もらいに来たよー」
「おう、早いな。ほら、これ全部持ってけ!」
俺は自慢げに、乱暴に積み上げられた雑誌を指差した。
「こんなにーっ!?すごい!!やった、ありがとう!」
江口は驚いたように目をくりくりと丸くし、笑顔で礼を言った。よかった。最近の江口は少し疲れているようだったので、喜んでほしかった。
「こんなに読んで、理系の大学にでも行くつもりかよ。」
「違うわよ!科学はロマンなの。青年よ、学問の道は遠きかな。」
「ぷっ、何だそれ、意味あってんのか!?(笑)」
あははは―、
俺らは声を合わせて笑った。それから、江口は科学のロマンというものを熱く語り、気づけばすっかり日は暮れていた。
「やだ、もうこんな時間――そろそろ行かなきゃ。」
「本、一気に持てる量じゃないし送ってくよ。確か、駅一緒だったよな?」
俺は雑誌を15冊ほど抱えた。
「あ・・・でも私寄ってく所あるし。ほらそれ、貸してっ!」
江口が俺の腕から雑誌を奪おうとした時
ふにゅん
はっ!?
「じゃ、残りの雑誌はまた明日取りにくるからっ、バイバイ!」
江口はそのまま出て行ってしまった。