第三話〔続〕――死神と炎人と帝国の黒歴史-6
「――――ンシーヌ……アルフォンシーヌっ……」
「っ、ぁ……ぅん?…………ぅ!」
名を呼ばれ、意識を覚醒させたアルフォンシーヌはとっさに飛び起きた。
だが、手枷に動きを制限され、結果、ベッドから堅い石の床へと落ちてしまう。
「ぁ……痛ぅ……」
「何をしているんだ、おまえは?」
「っうるさい!――と……」
そこで、ようやく格子越しの面会者の姿を捉えた。
漆黒の外套に闇色の上下――全身黒ずくめの男だ。
「――イグ、ナーツ?」
アルフォンシーヌは男の名を呼んだ。
確信はあるのだが、その登場が信じられない、と虚ろな声だった。
「んだよ。疑問系はおかしいだろ?この格好で一発だろうが」
それは、どうだろう?帝国近衛の工作班に所属する者の大半は似たような格好なのだが。
とまれ、その声から間違いなく同僚、『首刈りの黒三日月』イグナーツである。
牢には窓がないため、正確な時間は把握しかねるが、それでも体調や腹具合からまだ夜明け前であることを察したアルフォンシーヌ。
「な……なんで、おまえが?」
「早過ぎる、ってか?まあ、そうだよなあ……。でもよ、偶然さ。俺もこの国に用事があってよ。この街にいたんだよ」
「だからって、なぜ、わたしを――独断なのだろう?」
「そりゃそうさ。まだ、本隊にはおまえの失敗も知られてねえだろうよ」