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『魔人』と『女聖騎士』
【ファンタジー 官能小説】

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第三話〔続〕――死神と炎人と帝国の黒歴史-4

「まぁ〜た、モンブーのオッサンのとこか?んん?」



「そうだが?」



「ふぅん、へえ、そう……」



するすると音もなく近寄ってくるイグナーツ。

この男は魔導師ではなく、剣士だ。

だから、本来であれば距離をつめられるのはわたしにとって一利もないことなのだが、まあ、イグナーツの馴れ馴れしい態度は毎度のことだ。

――それに、もし、こちらに牙を剥こうと間合いに捕らえられたところで、こちらの魔法が炸裂するほうが遥かに早いのだから問題はなかった。

そんな事情を知ってか知らずかイグナーツが目前まで来ると、ぼそりと告げてきた。



「同じ近衛の暗部上がりってんで、教えといてやる。あのオッサン――きなくせえ」



「なに?」



「きなくせえ、ってんだよ。地味で従順なふりをしてるがな、こそこそとなんかを企んでいるんじゃねえかと、俺は踏んでいる」



「企む?何を?」



「それはいろいろあんだろ?陛下の暗殺、敵方への内通、可愛いとこだと上司の失脚とか――まあ、気をつけることだ。あんなんでも上司なんだ、一緒に零落ってこともあるぜ?」



「なぜ、わたしに?」



「言ったろ?俺はおめえだけは同僚だと思っているからだよ。気をつけな。次の任務も――互いに言えるもんでもねえが、んま、生還を祈ってる」



「ふんっ。それはこちらの台詞だ」



そう言いわたしは笑うと、黒フードの中から男も笑い返してきた。

ドキリと胸が高鳴った。

こんな感覚を二十半ばで覚えるとは、自身でも不覚のなすところだ。

――けれど、まあ、嫌な気はしなかった。





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