第三話〔続〕――死神と炎人と帝国の黒歴史-34
「……なぜ、わたしにそこまでするんだ?」
アルフォンシーヌは、そこまで聞いてもこの疑念を払拭することはできなかった。
――いや、それどころか、より一層理解できなくなっている。
この男の目的を考えれば、下手に帝国軍部に目を付けられるような真似はつつしんでしかるべきだ。
なのに、捕虜となった工作員の口封じという重要な任務を妨害してまで、なぜ、自分を助ける必要があった?しかも、救出後、同士だ、仲間だと勧誘するわけでもなく。
そんな不審の眼差しの先で、フェルナンがニヤリと笑った。
「――俺が、『死神』アルフォンシーヌ・ゴーンを密かに想っていたから」
心臓が跳ね上がった。
思わず、座っていた岩から落ちそうになってしまう。
「なっ?なにを、バカな!血迷ったことを、と、突然――」
「っぷ……ふっ……たははっ、たはははっ」
「っ?ぅ――」
真っ赤になったアルフォンシーヌだったが、フェルナンのニヤケ面を見て、すぐにからかわれたのだと気づく。
剣呑の視線を容赦なく叩き込む。
「いや、これは失敬。まさか、本気にするとは思わなくて……」
「くぅっ!そんなにバージンの恋愛感を弄って楽しいかっ?」
「は?」
「へ?」
「バージン?」
「ぁ……」
憤怒とは別の要因で赤面してしまうアルフォンシーヌ。
フェルナンが気まずそうに頭を下げてきた。