第三話〔続〕――死神と炎人と帝国の黒歴史-32
「……『聖人』は九人いた。うち、ひとりは魔道に堕ち、そして封じられた。そして、七百年前、『魔王』は帝国を造り、その『魔獣』の加護とやらのもと、現代、聖獣八ヶ国へと怨みを晴らそうとしている?」
「怨みを晴らそうとしてんのか、ほかに動機があるのかは知らないがな」
「どちらでもいい。そんなことはどうだっていいんだ!――つまり、わたしたちは、そんな神代の頃の戦いを代行していたということなのかっ?」
「まあ、そうなるな」
「っ――」
ショックだった。
自分はこれまで三十人以上の各国の要人を暗殺してきた。
帝国のため、わが郷土のためと信じ、命を奪っていったのだ!
――なのに、それがすべて、皇帝の私怨に由来したものだったのかっ?
「………………」
「信じられないか?」
「……と、うぜんだ」
愕然と沈黙しているとフェルナンが、こちらの心を読んだかのように呟いてきた。
力なく首を振るアルフォンシーヌ。
「だろうな。まあ、信じるも信じないもきみの好きにするがいい」
「な、に?」
「俺は、帝国を討つ。皇帝を地獄に送る」
「なっ――だがっ」
「もちろん、俺ひとりじゃあ一生を費やしたって敵いやしない。だが、当てならある」