第三話〔続〕――死神と炎人と帝国の黒歴史-30
「いついつに虐殺があったとか、何代目の皇帝が暗殺されていたとか、そんな話しじゃないんだ。それは帝国の起源に関わる話しであり、現在、帝国が聖獣八ヶ国に攻め入っている理由であり、皇帝ビルヒッドU世の急所を知らしめる内容なんだ」
「だから……なんなんだ、それは?」
アルフォンシーヌは眉根を寄せた。
もし平時でこんな話しを聞かされたら、間違いなく誇大妄想狂だと断じたはずだ。
「――皇帝陛下ひとりで、八人の導師を討てると思うか?」
そんなふうに疑っていると、フェルナンが突然、話しを変えてきた。
アルフォンシーヌは首を左右に振る。
「無理だ。第一、ベルゼル導師は『雷撃』と『烈風』、『氷河』の三種の黒魔法と『祝福』、『追放』の二種の白魔法を使えるんだぞ。並みの魔導師が百人集まるよりも性質が悪い」
「そうだ。姉貴にしたって、強力な魔導師であることには変わりはない。それこそ、この『焔舞』とかな。けれど、実際に皇帝は彼らを打ち倒した。おそらく、正面から斬り込んでな」
「そんな、バカな……」
「そうだ、ありえない。だが、あの男には加護があるんだ」
「加護、だと?」
「そう、加護だ。『魔獣』の加護を受けた『魔王』――」
「『魔獣』……?」
アルフォンシーヌは固まった。
パスク、フェルナン、イグナーツらの情報を総合すると――