第三話〔続〕――死神と炎人と帝国の黒歴史-27
「――俺は、バインツ・ベイの盗賊ギルドに拾われた。そこまでは話したな?」
「ああ。その前に『賢者の律令』にいたことも」
「それで、な?まあ、これほどの魔導師なうえ、俺って盗賊に向いていたんだな。こう、気配を隠すのとかが得意で」
「地味だしな。正に天賦の才だ、うらやましい」
「……普通だったら嫌味だと思うんだが、きみの場合は本気で褒めているんだよな、恐ろしいことに。とかく、マスターに気にいられた俺は出世し、外役――ギルドと各地の盗賊たちを繋ぐ役職なんだが、それの責任者になった」
「なんだ。いまと大して変わらないじゃないか」
「んま、性にあっているんだろうな。それで、な――アルフォンシーヌ。きみも目にしたあの軍部の介入が起きた」
たしか、八年前だ。地方の子爵が盗賊に入られ、宝物庫の七割ほどが盗まれた。
けれど、そんな事は日常茶飯事であり、軍部が動く理由などにはなりえない。
そもそも軍部と盗賊ギルドは、表向きは正悪に別れた水と油のような組織同士だが、根っこのところでは深く絡みついているのだ。
ほとんど同じ組織と呼んでも過言でないほどである。
だから、一子爵の盗賊事件などは適当な返事を返して終わるはずのことなのだ。
――本来であったならば。
だが、そのときは事情が違った。
その子爵の祖父という人間が大変な好事家だったらしく、子爵位に似つかわしくない珍しい逸品が宝物庫には多数安置されていたそうだ。
となれば、奪還は必至であり――、といった成り行きなのである。
結局、当時のギルドマスター、ハインツ・ゴーブルがすでにそれらの盗品の大半を売りさばいてしまったこともあり、また、ギルド自体には火が放たれてしまったためにその売った相手もわからずじまい――という無様な報告がされていた。