第三話〔続〕――死神と炎人と帝国の黒歴史-2
「では、もう一度ば。隣国ドラゴンに聖獣八ヶ国――いえ、聖獣七ヶ国ですな、いまは。その各国の勢力がドラゴンに結集しているのですよ」
「――で?」
わたしは見返す。自分で言うのもなんだが、元来のものに加え、最近は多忙と不摂生がたたり、今朝、鏡を覗いたときなど、すでにその眼光に『娘』の可憐な成分を見出せなかった。
そんな眼差しに射られたフェルナンは「たはったはっ」と愛想笑いを浮かべる。
「それで、です。ここからが本題。ゴーン様にですね、出向いていただけないか、と」
「それは、陛下のご命令で?」
「ええ、もちろん。皇帝陛下の勅命で。――と、言いますかな?わたくしがゴーン様への伝令事項で勅命だったことなどありましたかな?」
「……ないが、それをいちいち詰問しなければならないほどの内容なのか?」
「ぁ、いえいえいえいえいえっ!滅相もございませんよぅ!ご気分を害されてはこまります!たはっ、たはははっ……」
タハハ笑いが妙に耳につき、思わず眉根を寄せてしまったわたしはそのまま席を立った。
「え〜と、どちらへ?」
「任務を了解した。要は戦争になる前に釘を刺せ、ということだろう?方法はわたしが勝手に決める。いいな?」
「それは、その……もちろん……」
「ふんっ」
煮えきれない男だ。
そう胸中で評価しつつ、わたしは退室した。