第三話〔続〕――死神と炎人と帝国の黒歴史-17
「それじゃあ、まあ……帝国のために働かなきゃならねえんで多忙なんだ、俺はよ。早速始めようじゃねえか」
「……始める?」
「おいおい、決まってんだろ?生娘じゃねえんだし、カマトトぶるなってんだ――ああ、そうだった。処女だったんだよな?」
「っ――」
アルフォンシーヌは揶揄するイグナーツの言葉に、頬を紅潮させ、唇を噛んだ。
すると、イグナーツが吹き出してきた。
「ぷっ!あっはっはっは!何度聞いても笑える。あの、各国の用心を震え上がらせた『死神』さまが、処女っ?こいつは傑作だよな!」
「……っぅ」
――殺してやる。
屈辱と憎悪に、アルフォンシーヌは首筋を硬くさせた。
そんな反応すら、処女じみていたのかイグナーツはさらに嗤った。
「くっくっくっくっ……そうだそうだ。おまえら、前には手をつけるなよ?膜を破ったら、おまえらのを切り落としてやる。――っくく。にしても、こいつはまあ、奇した特典が付いたもんだなオイ」
背後の男ふたりへそう命じるとイグナーツがさらに近寄り、アルフォンシーヌの肩に手をかけてきた。
さすがに初めてとはいえ、話しだけは熟知している。
アルフォンシーヌは不快感を露わにしながらも、それでも悲鳴ひとつも上げなかった。
こんなもの、耐えていればすぐに終わるものだ。
処女だって、別段、なにかしらの覚悟の下に守ってきたわけではなく、単に機会がなかっただけなのである。
だから、イグナーツの余裕が気にならないでもなかったが、その顔を睨みつけた。
「ではでは――」
右肩のイグナーツの手に力が込められた。
――そのときである。