投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『魔人』と『女聖騎士』
【ファンタジー 官能小説】

『魔人』と『女聖騎士』の最初へ 『魔人』と『女聖騎士』 216 『魔人』と『女聖騎士』 218 『魔人』と『女聖騎士』の最後へ

第三話〔続〕――死神と炎人と帝国の黒歴史-12

「……イグナーツ?」



「いや……悪い。そうか、陛下が、か……」



ようやく口を開いたイグナーツへアルフォンシーヌは眉根を寄せた。



「イグナーツ、まさか本気にしているわけではあるまいな?謀りだよ、『魔人』お得意の戯言だ。わたしから話しておいてなんだが、ありえない話しだ」



「ああ、ありえねえな」



「だろう?」



アルフォンシーヌは上目使いになって、窺うようにイグナーツを見つめた。

その視線の先で、黒髪の男はテーブルの上に杯を置き、そして、大きく頷いてくる。



「そう。ありえねえ――」



そして、椅子の端に据えていた重心をわずかに上げた。

そこでようやく、アルフォンシーヌも違和感を覚えた。とっさに腰の裏に隠し持っていた短杖の柄へと手をかける。



「――なんで、『魔人』の野郎がそのことを知ってるんだ?」



「っ――」



イグナーツが見つめてきた。

無機質な、殺意すら込められていない硝子球のような眼である。

アルフォンシーヌは椅子を倒し、後方へと跳んだ。



「イグナーツっ?」



「んまあ、それは調べればすぐにわかることか。とにかく、いまの問題は……」



「イグナッ――」



アルフォンシーヌはその名を呼ぶのを止め、さらに五歩、後退した。

イグナーツがテーブルを蹴り上げたのだ。視界の大部分がテーブルと、その上に乗っていた杯や皿とで遮られる。

視界を塞ぐのは剣士が魔導師を相手にするときの常套手段だった。




『魔人』と『女聖騎士』の最初へ 『魔人』と『女聖騎士』 216 『魔人』と『女聖騎士』 218 『魔人』と『女聖騎士』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前