五日目-2
「あつ…っ」
この子熱あるじゃん。
だから呼吸が荒かったのか。無駄に全身熱いのか。
薬飲んだのかな。
いや、さすがに人ん家の薬箱の場所なんか知らないか。
この様子だと病院にも行ってないよね。どうしよう、誰もいないしこの時間だし…
あたしが、何とかしなきゃ。
一旦自分の部屋に戻って、必要そうな物をまとめて鞄に詰め込んで再び秀君の部屋に入った。
アイス枕をタオルで巻いて、冷えピタを用意して、スポーツドリンクを机に置いて。
「起きないでね〜…」
祈るように呟いて、そっと頭を持ち上げてアイス枕を敷いた。
自分がすごく悪いことをしてる気分。だって、若い男の子の部屋、いや、完全に他人の家に忍び込んで寝てる子の身体を触るなんて…、そりゃ緊急事態だけど、だとしても抵抗がありすぎる。だけどやらなきゃ。
前髪をあげて冷えピタを貼り付けた。
汗がすごいな。拭いた方がいいのかな。でも服を脱がさなきゃ…
裸にしてどうする!!!!
そこまであたしがする事はないでしょ。起きたら自分でやってもらおう。首とか顔くらいは冷やしてあげるか。
水で濡らしたタオルを首に当てると、
「ん…」
冷たそうに身体をくねらせる。
やばい、こっちの熱が上がりそう。
綺麗な肌。
汗ばんだ首筋、浮き上がった鎖骨。
なんか、すごくセクシー…
「…あたしゃ痴女か」
悲しい一人ツッコミ。
仕方ないじゃない、本当にドキドキしてるんだから。
秀君に触れたいと思ってる。
秀君に触れられたいと思ってる。
さっき抱きしめられたからだ。だからこんなにこの子を意識しちゃってるんだ。
…いいよね?
ちょっとだけだから。
やってることは完全に痴漢。もしくはセクハラ。
あたしってこんなに性欲強かったっけ…
自問自答しながら、そっと秀君の髪を撫でた。
少し茶色がかった硬い髪質。触れる度に胸がギュッと苦しくなる。
この子はもうすぐいなくなる…
ここからいなくなっても、また会うことはできないのかな。
本当にデートの続きしてくれるのかな。
「ん…」
秀君が小さな声を出した。
慌てて一歩後ろに下がって息を整えた。
びっくりした…
心臓が激しく動きすぎて痛い。
秀君は頭を重そうに持ち上げて部屋を見回してあたしに気づいた。