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無垢
【その他 官能小説】

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天使-1

貪りあう男女の姿は、壊れたレコードのように何度も何度も繰り返し映し出されていた。男の背中に手を回し、激しく腰を使う絵里。快感に溺れ、激しく体を震わせる絵里。そして、恍惚とした表情で男の精を受け止める絵里の映像が繰り返し流れ続けていた。

「君は僕を裏切ったんだね。」

隆一の声が静かに響いた。隆一の最後の計画が始まった。処女を失い穢れてしまった絵里に、隆一は何の興味も感じなかった。隆一が付き合ってきた成熟した水蜜桃のような女性達に比べれば、今の絵里は男を喜ばせるテクニックも知らず、狂おしく官能的なセックスをすることもできない、薄汚れた小娘にしか過ぎないのだ。
男を知らない処女という、純粋無垢な体を失った絵里に何の価値も見出すことはできなかった。

「野良犬に咬まれただけなら許しもしよう。しかし、君は・・・・・」

その時だった。激しい頭痛が襲ってきた。同時に、目の奥が激しく痛み、胸が激しく締め付けられる。こんな時に・・・・

隆一は、絵里を凌辱する前に、それを心行くまで楽しめるよう、この地で入手した危険な薬を服用していた。その薬が粗悪品であったのか、服用後から酷い副作用に悩まされていた。

絵里は激しく同様した。隆一の瞳に涙が溢れ、いく筋にも渡って零れ落ちていく。
隆一の苦しみが手に取るように伝わってくる。絵里は悔やんだ。隆一を苦しめたことに比べれば、自分の身に起きたことなど小さなことだった。そして、隆一を苦しめた自分を責めずにいられなかった。

「ごめんなさい・・・・」

受け入れた訳ではなかった。怖かった。体の中に汚物を放たれ、狂いそうになるほど気持ち悪かった。混乱し薄れて行く意識の中で、隆一の名を呼び、助けを求め続けていた。そして、いつしか隆一に抱かれている錯覚に陥っていた。そのことが、裏切りになるのか絵里には分からなかった。ただ、絵里が見知らぬ男を相手に体を震わせ、隆一を苦しめたことは、紛れもない事実だった。許してもらえないのは仕方がない。だからこそ、少しでも隆一の苦しみを和らげたい、償いがしたいと思っていた。

「隆一さん。ごめんなさい。赦してもらえるとは思わない。でも、何か償いをさせて、私が罰を受けることで、少しでも隆一さんに苦しみが和らぐのなら、私はどんな責苦でも喜んで受けます。」

絵里に迷いはなかった。自分の身に起きた不幸を恨むことさえ忘れ、信じてもらえないことを嘆くことさえ忘れて、隆一の身を案じ、隆一の負担を軽くする為に身を捧げようとしていた。隆一を愛していた。信じてもらえなくても、それだけは変らない。全てを掛けて隆一だけを愛し続けると絵里は堅く誓っていた。

「償い?そうだね、それで君の気が済むのなら・・・・・」

隆一は心の中で微笑んだ。隆一は最初からそのつもりなのだ。ただ捨てるのは簡単だが、妊娠でもしていて、付き纏われても煩わしい。自分の前に二度と姿を見せないよう、奴隷商に売り渡すつもりでいたのだ。

隆一に言われるままに、絵里は目隠しをしてゴンドラに乗り込んだ。どこへ行くのかは聞かされていなかった。ゴンドラがゆらゆらと揺れながら進んでいく。絵里は、一人静かに椅子に腰掛け、数日前の出来事を思い浮かべていた。隆一の腕に抱かれて見上げたヴェニスの街は本当に美しかった。あの時と同じようにカンツォーネが聞こえてくる。幸せだった。隆一と出会い、隆一とこの街に来るために生きてきたようにさえ思える。心残りがないと言えば嘘になる。しかし、隆一と別れることになったとしても、隆一との思い出だけで生きていける。それほど隆一と過ごした日々は、絵里にとって大切なものだった。そう思うと、隆一への溢れるような感謝の気持ちが湧いてきた。


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