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無垢
【その他 官能小説】

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天使-5

ゴンドラが運河を滑っていく。絵里は、隆一の腕の中で、隆一の瞳を見つめていた。

絵里は考えていた。隆一と出合ってから、絵里が想像もできないような沢山の出来事が通り過ぎて行った。それらの全ては、絵里の想像を遥かに超える喜びを教え、不幸があることを教え、無力であることを教え、そして、愛することの素晴らしさを教えてくれた。

分からないことも沢山あった。あの場所にいた他の女性達はどうなってしまったのか? 絵里を取り戻すために隆一が使った膨大なお金をどうすれば良いのか? 
そして、自分の犯した罪を償うことなど、本当にできるのだろうか? 無力な絵里に出来ることなど何もないような気がしていた。

だからこそ絵里は、隆一を見詰めていた。隆一は、しっかりと絵里を抱き締め、優しく絵里を見詰めてくれている。私に出来ることは、隆一さんを愛することだけ。
隆一さんが求めてくれるなら、その気持ちに応えて、どこまでも着いて行くのだと思っていた。


隆一が、絵里に優しく語り掛ける。

「絵里。僕を許してくれるかい?」
「許すなんてそんな、少しも隆一さんを恨んでなんかいません。」
「僕は、絵里にすまないことをしたと思っている。
あんなことをして、後悔しているんだ。
そして分かったんだ。僕はもう、君なしでは生きられない。」

絵里が驚いたように隆一を見詰める。その瞳を、隆一が真直ぐに見詰めている。

「絵里。僕と結婚してくれるかい?」

それは、偽りのない隆一の心からの言葉だった。
絵里は、輝くような笑顔で、隆一の言葉に頷いていた。



ホテルの窓辺で、絵里は純白のドレスに身を包み、ヴェニスの街を見下ろしていた。
隆一の希望で教会へ向かうまでの時間を二人で過ごすことにしていた。

純白のドレスに身を包んだ絵里に窓からの光が降り注ぐ、その姿はどこまでも清楚で、地上に舞い降りた天使とさえ思えるほどだった。絵里が、輝くような笑顔で隆一を振り返る。

「隆一さん。どうですか? 似合っていますか?」
「素敵だよ。純白のドレスは絵里の為にあるようだ。
本当に良く似合う・・・・まるで、天使のようだよ・・・・」

隆一が、絵里を抱き寄せる。

「絵里。僕の言うことを聞いてくれるかい?」
「はい。隆一さんの言うことなら、どんなことでも・・・・」
「あの時の言葉をもう一度言ってくれないか?」
「あの時の?」
「そう、あの日、教会へ向かう前にベッドで絵里が言った。ほら、思い出した?」
「・・・・・・」

絵里が、隆一の腕の中ではずかしそうに瞳を伏せる。


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