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無垢
【その他 官能小説】

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天使-2

ゴンドラが岸辺に寄せられる。絵里は目隠しのまま、隆一の手に引かれて陸へと上っていた。長い道のりを歩いていく。絵里は、最後になるかもしれないと、隆一の手の感触を確かめるように、隆一の手をしっかりと握っていた。建物に入ったようだ。隆一に進められるままに椅子へと腰を掛けた。

目隠しが外される。蝋燭の明かりの向こうに老婆が一人座っていた。老婆が一枚の紙とペンを取り出し、絵里の前に置いた。

「絵里。これにサインをしなさい。これが君の望んだ償いだ。君は、性奴隷として売られることになる。」

絵里は目の前が真っ暗になるほどの衝撃に包まれていた。覚悟はしていた。それが隆一の選択なら黙ってそれに従うだけだ。しかし、隆一の苦しみがこれほどまでに激しいものだと知り、自分の犯した罪のあまりの大きさに愕然としていた。

絵里が隆一を見上げる。隆一は冷たい目で絵里を見つめたまま、ゆっくりと頷いた。
サインをしようとするが、手が振るえて思うように進まない。やっとの思いでサインを書き上げると、大男が現れ絵里を引き立てようとした。

「待って下さい。一言だけ。」

絵里は、隆一を真直ぐに見詰めると、愛し合った日々と変わらない、弾けるような笑顔を見せた。

「隆一さん。ありがとう。本当にありがとう。隆一さんに会えて本当に良かった。」

言い終わると同時に、大男が絵里を引き立てる。絵里は、それに抵抗することなく、ただ隆一を見詰めたている。やがて、絡み合う二人の視線を冷たいドアが遮り、絵里の体はドアの向こうに消えていった。

「っく!」

突然に、激しい頭痛が隆一を襲った。

「くそ!まただ、あの薬のせいか?」

割れるように頭が痛み、息が止まるほどに胸が締め付けられる。隆一は、逃げるようにしてその場を逃れ、ホテルへと戻っていた。薬の副作用は収まるどころか更に酷くなっていく。目の奥が焼けるように痛んで涙が止まらない、締め付けられるように痛んでいた胸には、大きな穴が空いたような感覚に変り、気が狂いそうなほどの不安に包まれていた。

絵里は、暗い地下室に閉じ込められていた。その場所は、恐ろしい体験をした場所にそっくりで、絵里は、それだけで怖くてたまらなかった。やがて、いやらしい目つきの女達が現れて、絵里の着物を剥ぎ取り、裸同然のいやらしい衣装を身につけさせた。そして、絵里に娼婦のような派手な化粧を施しながら口々に話し始めた。

「あんた。どんな男に騙されたんだい?」
「ろくでもない男に付いて行くなんて、バカな女だよ。」
「まあ、ステージに上ったら精一杯、美しく振舞うんだね。」
「安く買い叩いた女は、それだけ簡単に殺されるみたいだよ。」
「変態でも金を出した女は、それなりに扱うからねえ。」
「最近はそうでもないよ。ほら、あの死姦が趣味の気違いなんか、高い金払って女を買うじゃないか。」
「そうねえ。でも、この娘は本日のファイナルステージだよ。そんなに簡単に殺してしまうかしら?」
「だからこそ危ないのよ。あの気違いも来るに違いないし、ほら、あのアラブ人、若い娘のはく製をコレクションしているあの男だって来ているわよ。しかも、この娘は珍しい日本人でしょう?あの男のコレクションに日本人のはく製はなかったはずだよ?」

絵里は震え上がっていた。女達の話しは、絵里の想像を遥かに超えていた。涙が止め処なく溢れて零れ落ちていく。


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