第一章-2
夕食後……。
「上手くいきましたね」
「私たちが露骨にしすぎてバレかけたけど」
「けど、これで明日になったらヒロは……くふふふふ」
三美女は内心、嬉しかった。何しろ計画は順調に進んでいるのだから。そして、その顔には微笑が浮かんでいた。
今宵の月は不気味に光る赤。それは不吉な予兆をかもし出していた。
「…………だるいぃ」
今日はどんよりした天気で、妙に寒々しい。それに加え、変な身体の倦怠感が付きまとう。身体は火照っているが、風邪を引いたわけじゃない。咳や鼻水もなく、体温計で測ってみたけど平熱だった。
そのせいで、せっかくの朝の楽しみ、ヒーローヒロインタイムを見逃してしまった。うち、一本は今日が最終回……くやしい。
更に、遅く起きての朝食も残してしまう体たらく。どうも変だ。
「……………………ダメだ。今日は何もやる気がしないよ……。寝てよ」
体調の悪いときは寝ているのが一番。無理して倒れたら一大事だし。
というわけで、ボクはベッドの中にいた。体温並に暖まった毛布の心地よさは抜群。ずっとくるまっていたいぐらい。
「それにしてもヘンだよなぁ。何の前触れもなく、身体が動かないだなんて。悪いものでも食べたかな……ってそんなわけないか。スミレが管理してるんだし。ああ……ダメだ」
ありもしないことを口にするボク。罰当たりもいいところだ。
とにかく今のボクには、静養が必要であることが判明している。
ふと、寝返りを打ったときだった。目についたのが、某有名イラストレーターのエロいイラスト。ボクは、要らないって言ってのにスミレと姉が勝手に張り付けた、そのイラストを見た瞬間、
「あふぁっ!」
身体が猛烈に熱くなるのを感じた。特に下半身に、その熱の帯び方は半端じゃない。それは火傷しそうなほど。
「熱い……」
ボクはゆっくりと熱源に手を近づけた。それはボクのペニス……。
「な、何でだよ……」
そこはどう形容していいかわからないほどに膨張していた。ボクサーブリーフを突き破らんばかりに。
「どうしよう。このままじゃ外に出られないよぉ……」
外からでも丸わかりの勃起ペニス。こんなものんを我が家の女性陣に見せるわけにはいかない。理由は性欲に飢えた、美少女・美女に襲われるからだ。特に昨日はアオイさんが宿泊して、いまだに留まっている。これ以上に悪条件が揃うのは、まずない。
「とにかく収まるのを待つしかないな……。どれだけ時間がかかるかわからないけど」
ボクには自慰をする習慣がそもそもない。というか、したことがない。しなくても別に困らないし、誰かに迷惑をかけるわけでもない。ボクの場合、勃起したときは、タだひたすら静まるのを待つだけ。
「…………でも、治らなかったら?」
この状態がいつまで続くのか、それが問題だった。一過性のものだろうとは思うが、もしもずっとこのままだったら……。
ボクはゾッとした。これは明らかな異常だ。外に助けを求めるべきでは?いや、出来ない。こんなもの見せたらボクは恥さらしの上に、襲われてしまう。それだけはダメだ。
「耐えるしかないんだ……」
苦しい決断だが、ここは辛抱するのが最善とした。
ここから、ボクの辛く厳しい戦いが始まった。