愛しのお菊ちゃんラスト-1
新たなる幕開け
家に帰ると…。
「お帰りなさいませ」
お菊ちゃんが玄関先で僕を待っていてくれた。
「お菊ちゃん…」
お菊ちゃんを見た瞬間…涙が零れそうになる僕。
なんだろう…お菊ちゃんの顔を見たらホッとしちゃったのかなぁ。
そんな僕と比べて、あくまでも気丈に微笑むお菊ちゃん。
自分の身体の陰から何かをスッと出した。
えっ!?洗面器!?
洗面器の中に水が張ってある。
「さぁ…靴なる物を脱いで下さい」
僕の為なのかなぁ。
弾んだ声のお菊ちゃん。
「う…うん」
やっと笑顔になれた僕…言われるまま靴を脱ぐけど。
お菊ちゃん…アレをするつもりなのかなぁ。
「さぁ…お掛け下さい」
靴を脱いだ僕。
お菊ちゃんに促されるままに玄関の上がりカマチに腰を下ろす。
すると…僕の靴下を脱がすお菊ちゃん。
そして…。
「お疲れになられたでしょう…」
洗面器に僕の足先を浸けて洗い始めるお菊ちゃん。
これは昔は当たり前の事だったんだね。
そぅは聞いていてもやっぱ照れちゃうよ。
「お勤めご苦労様でした」
そんな照れ笑いを浮かべている僕をニコニコと見上げるお菊ちゃん。
「ありがとう」
お菊ちゃんの献身さに心からのお礼。
「今日ね…だいぶいい感じで儀式が出来たよ」
僕のやっている事が何なのか…。
何て表現していいのか判らずに儀式って言葉を使ったけど。
そうまでしてもお菊ちゃんにはちゃんと話しておきたいんだ。
お菊ちゃんも…。
「それはようございました」
屈託のない言葉で喜んでくれてる。
そして。
「さぁ終わりましたよ」
洗い終えた僕の足先をタオルで拭くともう一度ニッコリと微笑んだ。
その夜はさすがに疲れていたのかな。
僕はお菊ちゃんを抱きしめたまま、あっと言う間に眠りに落ちていた。
朝だ…。
「んんん…っ」
朝の光の中、目を開く僕。
目覚めて直ぐに目にしたのは…。