愛しのお菊ちゃん15-2
「なれど…」
「なれど?」
まだ…何かあんの?
「成仏の儀の際はこの寺をお使い下さい」
実際には有難い話だけど…。
でもそれじゃあ…僕は鵬蓮さんの前で…。
「で…でも…」
「わたくしの事は気に止める必要はありません、それにもしも時にはわたくしも傍にいた方がいいでしょう」
僕の言葉を遮るようにして喋る鵬蓮さん。
その目は優しい時の鵬蓮さんの目の中でも格別に優しかった。
こうして初の除霊を目前に控えた僕。
鵬蓮さんに深々と頭を下げると愛善院を後にした。
ちななに今日の移動はチャリね。
「ただいまんこ!」
だいぶ…いや殆ど、いつもの僕に戻った僕。
今日もお菊ちゃんの待つ我が家にヘラヘラと帰還。
「お…お帰りなさいませ!!」
部屋に入るとお菊ちゃんが待っていた。
待っていたけど…。
お菊ちゃん…何故に白鉢巻きにたすき掛けで薙刀を持ってるの?
「ん?どうしたの?ま…まさか、くせ者!?」
お菊ちゃんの口調が移りながらも泥棒の心配をする僕。
「い…いえ!俊樹さまは近々、戦に行かれるのですよね!菊はその助太刀にと思い!」
キリッとマナコを見開いたお菊ちゃん。
至って真剣のようだ。
お菊ちゃんはきっと幽霊さん独特の勘で貞ちゃんの事を感じ取ったんだな。
「ちょっと座ろうかお菊ちゃん」
どこまでも僕の事を心配してくれるお菊ちゃんの気持ちが嬉しくて。
ついつい顔を綻ばしちゃう僕。
お菊ちゃんの手を取ってベットに座る。
つられてベットに腰を下ろすお菊ちゃん。
「あのね…確かに新しい幽霊さんに出会ったけど」
僕はやっぱ、まだどこかに後ろめたい気持ちがあって。
言葉を濁しながら貞ちゃんの事や鵬蓮さんの話をお菊ちゃんに伝えた。
「では!俊樹さまに危険はないのでございますね」
話を聞き終えて…その顔をパッと輝かすお菊ちゃん。
な…なんていい子なの!
お菊ちゃんにとっては辛い話なのに…。
何よりも僕の身だけを心配するなんて。
「う…うん、でも…」
やっぱこの話は煮え切れない僕だけど。
「俊樹さま!そんな顔をなさらずに下さいませ!俊樹さまにしか出来ないお役目なのですよ!」
叱咤するように僕を激励するお菊ちゃん。
「わかったよ!お菊ちゃん!」
僕も…これ以上、ウジウジするのは辞めた。
僕が堂々として心はしっかりお菊ちゃんに預けておく事。
それが何よりお菊ちゃんの気持ちに報いる為だ。
「ありがとう…お菊ちゃん」
僕はおもいっきり、お菊ちゃんを抱きしめちゃう。
「あっ!俊樹さまっ!」
日本髪に鉢巻きを巻いたままのお菊ちゃんが驚いたように目を見開いてる。
この鉢巻きも妙に似合ってる。
その同じようにビックリした形の口を自分の口で塞ぐ僕。
「うっ!むっっ…」
突然のチュウに更にビックリするお菊ちゃん。
けど…見開いていた瞳が次第にウットリしてきてる。