tomomi 完結編-4
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警察のお世話になった事はまだなかったけど、ここは警察とは少し違った雰囲気だった。
なぜなら机の上に電気スタンドもなければ伊丹憲一みたいな鬼刑事もいない。
白髪頭で眉毛の長く、人が好さようにいちいち静かに頷く初老の担当官にいきさつの説明を求められ、住所と名前を聞かれたが私はこの後に及んで「知美」とだけ名乗って夫のために死んでも口を割るまいと思った。
それより四年間の結婚生活で新聞記者だとばかり思い込んでた夫の正体がなにか特別な機関の捜査官だったなんて…
そう、たしかに毎月振り込まれる給与は某新聞社からの振出しになっているはずなのに顔形に声、それに見慣れた服装まで間違いなく夫だったのだ。
「知美さん…まぁ街角で拾われた臨時雇いという事なら一応形式的な事だからね…
うんうん、事情は分かってるよ。」
温厚な担当官はその瞬間だけ、鋭い眼光を放った。
その意味の真意はわからないけれど、とうとう私は名前と住所を白状した。
そして間もなく解放されたのだった。
売春の罪で刑務所に入れられるかと思った。
知らなかったとはいえ、マルカンと名乗った機関の人間の妻が摘発されればどういう事になるか想像もできず私は震えたままタクシーで帰ったけど、不思議な事にその後は何一つ変わった事はなくまるで悪い夢を見ていただけのようだった。
ニュースが県会議員を始めとする何人かの政治家が汚職に関わっていたと伝えた。
また、大掛かりな売春の斡旋に関わっていたとかで近く逮捕されると言っていた。
それは正に私の乳首を離さなかったあの男が慌てて車に乗り込む映像だった。
すべてがおかしい事ばかりだけど、私がもしあそこで自分は「知美」という淫乱な女だと押し通していればすべてがまた変わっていたような気がする。
そうして私はだんだんと太くて激しいバイブの動きにも慣れて、今は昼下がりのリビングやひとり寝のベッドの上で腰を震わせているのだった。
tomomi―完結