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やさぐれ娘は屋上で笑う
【学園物 恋愛小説】

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#03  研修旅行――二日目-1

まあ、いきなりでなんだが、基本的な疑問として、だ。

――なんで、朝に強いやつと弱いやつがいるんだろう?

そして、大抵の場合、朝に強いやつのほうが強制決定権を持つんだ?

……そんなことを思いながら、私、佐倉萌は鏡越しに背後を睨んだ。

そこでは、



「柚子ぅ〜!そっち持って!」

「う、ん……」

「それじゃ、一、二のさ――って、柚子、こら!布団を運ぼうとするフリして、なんで二度寝に挑戦しちゃってるの!?」

「ぁ、う……」



同室の林田尊が、同じく同室の相原柚子葉に叫び散らしていた。

鏡越しではよくわからないが、おそらく、布団を畳もうという段階で寝具を目の前にした相原が睡魔の誘惑に負けてしまったのだろう。

……安心しろ。その気持ち、すっっげえわかる。

なにせ、布団を前にしたら私もまったく同じ行動を取るだろう。それほど、眠い。

♪「いま、何時っ?」、そっうねっ……――まだ、六時前だよコンチクショウ!

学校側の予定では、たしかに六時起床となってはいるが、しかし、次の行程は七時十五分からの朝食だ。

とどのつまり、『六時起床』というのは、昨晩の消灯時間が十時であり、その八時間後に合わせた――言っちゃえば建前でしかなく、七時十五分の朝食の席に出れるように、っていうのが本質なのである。



なのに……なのに、なのに、なのにぃいいいい〜〜〜〜っっ!こンのクソアマ!



シャコシャコと歯を磨いて、何とか覚醒を促そうとしながらも、私はミス・レギュレーション――林田への呪詛を延々と心の中で叫び続けた。



「――佐倉さん!いつまで洗面台にいるんですか!早く、準備してくださいよ?もうすぐ、六時になっちゃいますよ!」

「なっちゃたら、どうだってんだよクソが……」

「ハイ?ナニカ?」

「いや、おまえ、絶対に聞こえてただろ……。いや、いいけどよ、別に」



嘆息をひとつ、私は口の中の歯磨き粉をすすいだ。

髪も整え終わったことだし、ひとまず終了。――化粧を林田の前でやって一悶着起こすほど、私はKYではないし。

手ぬぐいで口元を拭き、洗面台を出た。

そこは六畳の和室である。

鎌倉の市街地から、すこし離れた沿岸に建てられたホテル『星月夜』の別館六階の一室だ。




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