#03 研修旅行――二日目-6
「ふ――ふざけんなよっ?ケンカ売ってんのはそっちだろうが!おまえが先公にチクッたりしなきゃよかったんだよ!」
「チクる?……密告を、俺が?…………ふむ。きみはどうやら、事態に動揺しているためか、はたまた生来からしてそそっかしいのか、勘違いしているよ。別に、俺は先生になにも言ってなんかいない」
「うそつけ!おまえが出ていってすぐに、先公が来やがったじゃねえか!」
私は、ひたすら呆れた。この、調子に乗りやすく、早計で、群れることを得意とする考えなしのバカクラスメイトたちにだ。
山崎だけでなく、その背後の四人も岐島に剣呑な眼差しを送っている。
――本当に、揃いも揃ってバカだ。
そもそも、飲酒をしたのはおまえらだろうし、――それに、昨日のその時間だったら、おそらく、岐島は私と一緒にいた時間だろう。
冤罪にも劣る、ただの責任転嫁だ。
……けれど、さすがに夜、男女がふたりで会っていたと言うのには岐島も抵抗があるのだろう。困惑して、ムッツリと黙りつつ、私を見つめて、なにか閃いたように、
「っ!丁度いい。証人がいる。俺は昨日、彼女と一緒に――」
「〜〜ッ!」
「痛いっ?佐倉萌。きみは、……突然、なにをするんだ?」
「それはコッチのセリフだ、岐島ぁ〜!なにを暴露してんだ、てめえはっ?」
とりあえず、私は風のように立ち上がると、岐島の太股へローキックをかました。
スカートがめくれるとか、そんなのは、いまは忖度できやしない。
なにせ、この騒ぎを聞きつけて、すでに二十人ほどのオーディエンスが集まっているんだ!
「……きみが怒る理由に、一切の見当がつかないんだが?突如、他人を蹴りたくなる奇病でも患って――」
「ねェよっ!?おまえさあ〜っ、ちょっとは考えろよ?な?なっ!」
「……?………………っ!ああ、そういうことか。なるほど、それでも、きみの攻撃内容にはいささかの不満を覚えるけれども、誤解を生み出したのは俺の責任だね」
ようやく、自身の失言に気づいたようだ。
岐島が――誤解を解くつもりなのか――集まった同級生たちへと視線を巡らせると、静かに言う。