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愛しのお菊ちゃん
【ホラー 官能小説】

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愛しのお菊ちゃん14-2

「じゃあ…ちょっと待ってて」
出掛ける準備に取り掛かろうとする僕だけど。

「いえ!菊ひとりで行ってまいります」
キッパリとした顔のお菊ちゃん。

「いやいや」
ニコニコと引かない僕。

「いえ!お婆様の事もあります。それに菊もそろそろ慣れませぬと」
わっ!時折見せる頑固者のお菊ちゃんだ。

「でも夜道は危ないよ」
もうちょっと粘る僕。

「俊樹さま…菊は幽霊でございますよ」
夜道の心配をする僕にクスクスと笑って応えるお菊ちゃん。
まぁ…確かに…って感じだよね。
ここはひとつお菊ちゃんの意思を尊重するか。
「じゃあ…早く帰ってきてね」
折れた僕は淋しさアリアリの笑顔でお菊ちゃんを送り出した。

しかし慣れる為なんて…。
お菊ちゃんの心遣いや僕との生活を楽しんでいる樣が嬉しくて僕はニヤニヤとしながら自分の部屋に引っ込んだ。


ご飯も食べて、お風呂も上がった僕。
かなり普段の僕に戻り。
リビングのソファにドカッと座るとテレビのリモコンをカチカチ。
おっ!エーケービーが出てるぞ。
この子たちも可愛いけど、もしお菊ちゃんがエーケービーに入ったら間違いなくセンターポジションだよな。
なんて考えてたら。
カチッ――。
カチカチ――。
「えっ!?」
部屋の灯りがチカチカと点滅し始めた。
「なっ!なに!?」
元来ビビりの僕は両膝を抱くようにソファの上に縮こまる。
ザァァ―――――。
「うぉ!!」
テレビの画面が砂嵐になった。
そして部屋の灯りがスッと消えた。
「ちょ…ちょっと!」
砂嵐状態のテレビの画面に青白く照らされた薄暗い部屋。
その中でソファの上に身を縮込ませ…ガタガタ震える僕。
「な!なによ!」
ついつい大きな独り言が口から出ちゃう。
「うわっ!」
砂嵐の画面に何か…映りだした!!
い…井戸だぁ!!!
「あわあわあわっ!!」
もうすっかりパニック状態の僕。
青白い画面は乱れながらも森の中の井戸と判る映像を映し始めた。
「うぎゃぁぁぁぁ!」
その井戸から首を前に垂れて長い髪で顔を隠した女の人が!!女の人が井戸から出てきたぁ!!
「うひゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
半べそでおしっこをチビりそうになる僕。
井戸から出た女の人が這うようにして!!
テ…テ…テ…テレビから出てくる!!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
喉が裂けるくらいに悲鳴を上げ続ける僕。
だって幽霊って…いる事知ってるもん!
テレビから出て来てるの間違いなく幽霊だよ!!
ドッキリじゃないよ!
アワアワと震えまくる僕。
気絶できればどんなに楽だろうって思えるのに…気を失う気配はないよぉ!
そんな僕を余所にテレビから出てきた女の人は立ち上がると前髪を顔の前に垂らしたまま、フラフラと近づいてくる。
「ご…ご…ご…ごめんなあい」
本泣きの僕。

『しっかりなさい!!』
そんな僕の脳裏に鵬蓮さんの叱咤する声が響いた。


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