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愛しのお菊ちゃん
【ホラー 官能小説】

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愛しのお菊ちゃん13-2

「そうだね…帰ろか」
ちょっと最後が鼻声になってしまう僕。

「俊樹…さま?」
瞳を潤ませ僕を訝しんだ目で見つめてくるお菊ちゃん。

「うんん…何でもない、さぁ…帰ろ」
僕は横に並ぶお菊ちゃんを強く…強く…抱き寄せた。


愛善院、本堂…。

鵬蓮さんはその柳の葉の様な瞳に…。
何の表情をも感じさせないで僕を見つめている。

ゴクッ――。
生唾を飲んで鵬蓮さんをジッと見つめ返す僕。

「では除霊を受ける気はないと?」
あくまでも冷静な感じの鵬蓮さんに対して。

食い入れ気味で力強く頷く僕。

「死ぬおつもりですか?」
趣味でも聞くみたいな軽い響きの鵬蓮さんの言葉。

「いえ!でも!お菊ちゃんと離ればなれになるつもりもありません!!」
僕は自分を奮い立たせながら自分の正直な思いを鵬蓮さんにぶつける。

黙って僕を見つめる鵬蓮さん。
その瞳には依然、何の表情もない。
そして…。
「その覚悟は本物でございますか?」
静かに僕の瞳を覗き込んでくる。

僕も黙って…黙ったまま、もう一度力強く頷く。

暫く無言まま僕の瞳を見つめ続ける鵬蓮さん。
まるで僕の覚悟を見定めているようだ。

斬りつけるような緊張が僕と鵬蓮さんの間に流れる。

ほんの僅かな時間だったけど…僕には一時間にも二時間にも感じられた。

「判りました…」
小さく笑う鵬蓮さん。

これで良かったんだ。
これで良かったんだ!
黙ったまま、それを見つめて自分に言い聞かせている僕。

「では…」

これで長くは生きられないんだなぁ…お母さん、ごめん。
なんかポッカリと大きな穴が心に空いた。
悲しくないと言ったら嘘になるけど…。
でも…。
でも!僕は他の誰よりもお菊ちゃんを選んだんだ!!
後悔を打ち消すように僕は心の中でグッと拳を握った。

「俊樹さん…貴方の覚悟、感じさせて頂きました」
鵬蓮さんの小さな微笑み…少し優しくなる。

「へ?」
僕…その優しげな感じに微かな疑問。

「ひとつ…ひとつだけ方法がある…と言ったら?」
その優しい微笑みを疑問符に変えて僕の瞳を覗き込み続ける鵬蓮さん。

それって…。
「それって!?」
命を縮める事なく…お菊ちゃんと過ごせる方法って事!?
思わず瞳を見開く僕。
そんな…そんな…そんな方法があるの!?
なんか興奮のあまり次の言葉が上手く出てこない僕。

そんな僕にコクって頷いて見せる鵬蓮さん。


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